忍者と聞くとちょっとわくわくする。
もう大人だから忍者になれないのはわかりきっているが、子どもの頃の強いあこがれは、今もはっきりと思い出すことができる。そんな幼い頃のスーパーヒーロー「忍者」になるおもちゃを謳う本書には、いったいどんな秘伝の術が隠されているのか。
まず目からウロコだったのが、おもちゃ作りは工作ではないということ。
本書には、忍者の気分を盛り上げてくれる「十字手裏剣」や「ストローアーチェリー」など、子どもが喜びそうな忍者の武器がいくつも紹介されているが、実は遊んでみて初めてその面白さ・魅力に気づく。大人はついカッコよくとか、キレイになど、遊ぶことよりも先に出来栄えのほうに気をとられがちだが、一度遊んでみると、遊ぶという行為がどんなに刺激的で楽しかったのか、ということを思い出させてくれるのだ。
手作りおもちゃぐらいで、おおげさな! と思う方は「ストローアーチェリー」をぜひお試しあれ! 「ビュン!」と飛ばす快感に、子どもはもちろん、大人も「もっともっと!」という心のスイッチが入るに違いない。
紹介されているおもちゃの中には、ちょっと難しい、あるいは工夫しがいのあるものもある。
筆者とうちの子どもがはまったのが「ムササビ手裏剣」。紙コップを持って、軽く上下させるとみるみる袋が膨らみ、まるでホバークラフトのよう。これには「おお、すげぇ!」と子どもから声があった。ただし、床を滑らせようとすると、「ツーッ」とよく滑るときもあれば、すぐにコケたり。どうやら投げ方や紙コップを取り付ける位置のバランスでいろいろ変わるらしい。気がつけば、大小さまざまな「ムササビ手裏剣」が5つも6つも出来上がってしまっていた。
忍者の修行もまた楽しい!
「ゆらゆらタワー」は、小さな子どもでも挑戦できる遊び。ゆらゆらするプレートの上に、崩さないよう、牛乳パックの輪切りを乗せていくだけという単純なものなのに、やりはじめると止まらない。実際に遊んでみると、市販品のおもちゃのようなカッチリした精度がないのが、より楽しさをアップさせているように感じる。
よくよく考えてみれば、既製品のおもちゃが世の中を席巻するようになったのは、昭和以降のごく最近のこと。それまでは、子どもたちは身の回りのものでおもちゃを作り、工夫して遊んでいたわけだ。そして、楽しいから何度も遊び、こうして繰り返すことから、体力や想像力、推理力などを培っていったのだろう。そう、これって遊びという名の修行。なるほど、「作って遊ぶ」はちゃんと忍者とつながるわけか。
世の中には、子どもたちを魅了する既製品のおもちゃ、キャラクターグッズやゲーム機などがあふれている。年末年始は、子どもにねだられ、そういうおもちゃをプレゼントしてしまう親御さんも多いことだろう。でも、せっかくなら手作りおもちゃで、親子の交流を深められたらと思う。
レビュアー
陸・海・空すべての乗り物とフィールドを愛するフリーライター。目指すは全天候型の物書きだが、猛暑と寒さに弱く、道のりは遠く険しい。