「最後の旅を一緒にしてくれる人を探しています」
若年性アルツハイマーの診断を受け、余命2年を宣告された26歳の青年・エミル。彼がインターネットの掲示板で人生最期の旅の同行者を募集したところ、ジョアンヌと名乗る小柄な若い女性が現れます。自身の過去を何も語ろうとしないジョアンヌ。2人はキャンピングカーに乗り込み、ピレネー山脈へ向けて出発します。雄大な自然と、限られた時間の中で「命」を見つめる感動のロードノベルです。
上下巻・計832ページの大長編ですが、長さを感じさせない爽やかな筆致と、山本知子氏による瑞々しい翻訳が特徴です。むしろ「もっと2人と旅をしていたかった」という声が多数寄せられました。著者のメリッサ・ダ・コスタ氏はインタビューの中で、「現実の人間関係は、時間をかけ、沈黙の中で相手を観察する中で築かれるものです。エミルとジョアンヌの関係に真実味を持たせるためには、その過程を丁寧に描写する必要がありました」と語ります。
いまや彼女はフランスを代表するベストセラー作家の1人です。2019年に本書でデビューを飾り、瞬く間にミリオンセラーを記録。立て続けに小説を出版し、2023年と2024年には「フランスで最も売れた作家」となりました。彼女が小説で一貫して取り組んでいるのは「再構築」というテーマ。邦訳第2作となる『立ち上がる時(上・下巻)』(2026年4月22日刊行予定)でも、その徹底した心理描写が光ります。
メリッサ氏の今後の活躍に、ぜひご注目ください。
――文芸第三出版部 市川裕太郎








