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2026.02.22

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豊臣秀吉・秀長だけじゃない!! 歴史を動かした11組のスゴイきょうだい!

日本史が身近になる一冊

「きょうだい」って人間関係は、とても奇妙で面白い。子供のころは、お互いにとっても影響を受けやすいのに、年をとると「それはゆずれる/それはゆずれない」という一線がはっきりしてくる。それでも仲が良かったり、それゆえに仲が悪くなったり。仲が悪くなっても、なんだか許せたり、まったく許せなかったりする。『日本史スゴイきょうだい!』は、日本史において活躍した、仲が良かったり、悪かったりした「きょうだい」を紹介した本だ。

今は小学3、4年生くらいで地域の歴史を知る授業があって、6年生で本格的に日本史を学び始めるそうだけど、この本はそのくらいの小学生にぴったり。「歴史はニガテ!」という中学生、高校生にもオススメだ。登場する「きょうだい」は、天智天皇と天武天皇、源頼朝と源義経、足利尊氏と足利直義(あしかがただよし)、織田信長と織田信勝、豊臣秀吉と豊臣秀長、真田信之と真田信繁、茶々と初と江、徳川家光と徳川忠長、坂本権平と坂本乙女と坂本龍馬、西郷隆盛と西郷従道、秋山好古と秋山真之の計11組。これらの「きょうだい」と、自分の「きょうだい」と引き比べながら「これは兄ちゃんのほうが悪い」「弟、めっちゃいい奴」なんて感じで読めば、 “生きた日本史”を感じられると思う。

なかでも面白かったのが、足利尊氏と足利直義の兄弟。
兄 足利尊氏▶感情の起伏激しい将軍
弟 足利直義▶兄をなだめる副将軍
として紹介されている。「みんな知っているかも」だけど、この室町幕府成立期、南北朝時代は日本史の勉強で1、2を争う面倒な時代! 権力争いを繰り広げる後醍醐天皇とその息子たち、やたら戦闘力の高い“強キャラ”の楠木正成や新田義貞といった武将があちこちで乱が起こして、時代の主人公が次々に現れるので、歴史の流れが掴みにくい。著者も
そのころ尊氏は南朝から直義追討令を出してもらって出陣します。
南朝は、直義と手を結んだこともあったはずなのに、なんだかもうめちゃくちゃですね。だから南北朝時代はわかりにくいと言われるのです。
と、ボヤくほど。でも、そんな時代も尊氏&直義視点で語られると「尊氏、息子可愛さに道を誤ったよ!」「直義、ジェラってる!」って感じで、スッと飲み込めること間違いなし。

スゴイ兄や姉を、一番身近に見てる弟と妹

本書の著者は、楠木誠一郎先生。ほら、学校の図書館にズラッと並んでいる『坂本龍馬は名探偵!!』とか『平賀源内は名探偵!!』っていうタイムスリップ探偵団シリーズを書いた先生。さっき足利尊氏と足利直義の兄弟を紹介したけど、楠木先生は、その兄弟関係をドロドロとした権力争いじゃなく、「このきょうだいは、このときどう感じていたんだろう?」って視点で描いている。例えば、兄に攻め滅ぼされた直義は
(兄者、やっぱり、おれたち兄弟は戦うべきじゃなかった。どうして、こんなことになってしまったんだよ。なあ、兄者、答えてくれよ)
と嘆き、尊氏は死の床で
(幕府を開いたころは、二頭政治が上手にできていたのになあ。なにがいけなかったんだろう。わしとしても、おまえと対立したかったわけじゃないんだ)
と思っている。もちろん物語だから、実際にそんなことを思っていたかどうかはわからない。だけど、そう解釈すれば、日本史がグッと身近に感じられる。そして、あのややこしい室町幕府成立期の流れも理解できる。一挙両得だ。

もうひとつ、この本のとても面白い視点となっているのが、
本書では、弟・妹の目線を中心にきょうだいを描きながら、彼らの関係が歴史にどのような影響をあたえたのかを探っていきたいと思います。
という点だ。この本に登場する11組の「きょうだい」のうち、坂本龍馬と真田信繁(幸村)を除けば、兄や姉のほうが一般的には名が知られている(天武天皇や源義経みたいな有名な弟もいるけど、天智天皇と源頼朝という兄がいてこその弟だしね)。めちゃデキ、優秀、行動力バツグン! そんな兄貴やお姉ちゃんを見て育った、弟や妹の気持ちってきっと複雑に違いない。反発したり、「スゲー」って尊敬したり、まったく逆の生き方をしたり……。「歴史は史実の積み重ねじゃなくて、実は感情の積み重ねなんじゃない?」って思えたら、もっと歴史のことが知りたくなるはず。ぜひ、読んでみて!

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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