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2026.01.11

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2026年大河ドラマ「豊臣兄弟!」で注目! 秀吉の弟、秀長はスゴイ人だった!!

兄・秀吉のことはみんな知っているけど……?

NHK大河ドラマの楽しみ方のひとつは、「この後、何があるかを知っているか」だと思う。ドラマは史実をベースに進むので、歴史を知っている=物語の筋と結末を、ある程度は知っていることになる。あの出来事をこの大河ドラマはどう描くのだろう? と考えるのがとても楽しい。

これは大人にも小中学生の大河ファンにもオススメできる視聴スタイルだ。「来週はついに“本能寺の変”だね~」なんて言いながら腕組みをする日曜日の夜は、なんとも愉快だ。

その点でいうと、2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』は始まる前からどうなるか本当に楽しみな作品だ。主人公は天下人・豊臣秀吉……ではなく、その弟・秀長。「え、そっち?」と思った。

豊臣秀長が何をした人か知っていますか? 私は即答できない。存在は知っているのに何者なのかはちょっとわからないのだ。例えば、戦国~安土桃山時代が舞台の大河ドラマ『真田丸』にも、秀長はもちろん登場した。覚えている。でも「何をしたか」と問われるとフワッとしたイメージばかりが浮かぶ。インパクト大な兄と比べると、なんだかすごくいい人だった。縁の下の力持ちで、豊臣ファミリーを人知れずまとめ上げ、惜しいタイミングで世を去ってしまう。そして秀長の死後、豊臣家はどんどん困ったことになっていく。そう、秀長は貴重な人だったのだ。

そんな秀長をどう描くのだろう。そして秀長を主人公に据えた世界で、兄・秀吉はどんな姿を見せてくれるのだろう。あれこれ展開を想像しながら大河ドラマを楽しむために、秀長のことを知りたい。

青い鳥文庫の『豊臣秀吉と秀長 天下をとった兄弟』は、まさに豊臣の兄弟を主人公にした戦国の物語だ。小学中級から読める。読み仮名があり、わかりやすい言葉づかいだが、内容はしっかり戦国絵巻。人たらしでアグレッシブな秀吉と、温厚な性格で部下に慕われ、兄をサポートする秀長。対照的なふたりが天下を取り、栄華を極めていく様子が史実にそって描かれる。「いつ、どの武将が、誰を倒したか」だけではない戦国時代の面白さがわかるはずだ。

もしかして、侍になったんか?

物語は、兄の日吉(秀吉)が8歳、弟の小竹(秀長)が5歳の頃から始まる。天文13年(1544年)だ。いろいろあって寺に預けられた日吉は、たちまち寺から脱走し、1人で村を飛び出してしまう。そしてその10年後……!
「よしよしっ、みんな、そろっているなっ!」
とつぜん日吉
が、家に飛びこんで来たのだ。色の黒い、しわだらけの顔は変わらなかったが、身なりは前とはみちがえるような、こざっぱりした侍姿だった。
(兄さん……。)小竹はまじまじと日吉を見つめた。(もしかして、侍になったんか?)
本作では、こういう感じで「弟の目線から見た秀吉」が描かれる。これが楽しい。時がさらに進み、永禄5年(1562年)。畑仕事に励む小竹は、こんなことを考える。
(兄さん、どうしているかな……。)
その気持ちが、口をついて出た。
「兄さん、どこにいるのやろう。信長さまにつかえると出ていったけど、侍になれたろうか。」

(中略)
すると、あさひがいった。
「日吉兄さんのこと、わたし、覚えていない。」
小竹がうなずいた。
「あさひは、小さかったからな。」

ふたたび畑をたがやしていると、馬の駆けてくる音がして、大きな声が響きわたった。
「おっかあ、小竹、あさひ! ここにおったか、おれだっ! 日吉っ、いや藤吉郎
だ!」
小竹はおどろいて、畑に、くわを落としそうになった。
出たり戻ってきたりをちょいちょい繰り返す兄と、そんな兄をビックリしつつも迎える弟。『豊臣兄弟!』の予告編でもまさにそんなシーンが登場して「『豊臣秀吉と秀長 天下をとった兄弟』で読んだあの話と同じ!」と思った。

秀吉は数年おきに急に故郷に現れ、そのたびに出世している。やがて秀長も秀吉の家来として侍になる。ちなみに、このとき「わたし、覚えていない」と言った妹のあさひも、やがて秀長や母“なか”と共に秀吉の天下取りに飲み込まれていく。ちゃんと秀長は「兄さん、それはダメだよ」と止めたのになあ……などと考えると、この場面での彼女のあどけなさが切ない。

秀吉さまの、根になりなされ

秀長が何をしてどんな存在だったのか。青い鳥文庫では、次のようなセリフで秀長の役割やイメージが描かれる。
「秀吉さまの、根になりなされ。」
軍師の竹中半兵衛が息を引きとる日に残した、そのことばを、小一郎秀長は生涯にわたって忘れなかった。
「秀吉さまは、どこまでも高く、高く、伸びていかれる大木
です。しかし、大木はしっかりした根がなければ、たおれてしまいます。小一郎どのは、大木を支える根となりなされ……。」
このシーンは冒頭にあるのだが、その後に続く物語も、「大木」の兄と「根」の弟のイメージを重ねると理解しやすい。

大木を支える強い根。侍になった秀長は、歴史の表舞台でギラギラ出世していく秀吉を静かに見つめ続けるのだ。例えば竹中半兵衛を仲間に引き入れるときも、秀長はなかなか首を縦に振らない半兵衛の様子を観察しながら、同じくらいの熱心さで秀吉を見ている。
「おれは信じているぞ、小一郎。半兵衛どのはかならず味方につく。かならずな。」
ことわられても、ことわられても、秀吉はあきらめなかった。くりかえし菩提山
(ぼだいさん)をおとずれ、真心をこめて、ひたむきに半兵衛にうったえつづけた。
(これが兄者のいいところだ。)小一郎は思った。(こうと決めたら、あきらめない。わたしの役目は、兄者の信念がまちがった方に向かわないかどうか、冷静に見きわめて、助けることだ……。)
こんな風に自分のことを受け止めて、大切なときに助けてくれる存在がいれば、秀吉も心強かったろうなと思う

秀長のほうが「うまくいく」こと

若い頃は「じっと見守る静かな弟」といった感じの秀長だったが、秀吉が武将として名を上げるにつれ、やがて表舞台に立ち始める。秀吉が何かと秀長を頼りにするのだ。
秀吉はうなずいた。
「信雄
(のぶかつ)に和睦を申し入れよ。わしと戦う気の家康を止めるには、信雄をおとなしくさせねばな。」それから秀吉はいった。「清洲へはわしが行くより、おまえのほうがうまくいく。」
この兄弟の天下取りでは、秀吉ではなく「秀長が進めたからうまくいったこと」が実はたくさんあったようだ。例えば統治が難しいとされていた「大和の国」では、秀長は古くからいる人たちとの関係をていねいに築いて平和に治めたのだという。

つまり戦国時代の天下統一は、ただ戦に強いだけでは成功しなかったともいえる。だから、秀長の温厚で辛抱強い性格に向いていることも、当時からちゃんとあったのだ。秀長は藤堂高虎など優れた家来にも恵まれ、もっというと秀吉の家来からも慕われ、秀吉と家来との調整役も担っていた様子がこの本では描かれる。そんな人望の厚い武将なのに、秀長本人はあくまで兄・秀吉の補佐に徹しているあたりもいい。「下剋上」といわれていた時代にずっと兄に寄り添っている。まさに「秀吉の根」だ。

秀吉と秀長が生まれ、戦国武将となった兄弟が天下統一を果たし、やがて大阪城が炎に包まれるまでの時代がていねいに語られる。大河ドラマの予習はもちろん、日本史を楽しむための本としてもおすすめだ。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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