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2026.01.04

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【2026年大河ドラマ「豊臣兄弟!」】この弟がいなかったら秀吉の天下統一はありえなかった!?

秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治

歴史の教科書で習う戦国時代といえば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。誰もが知る「天下人」たちの名前ばかりが並ぶ。では、その陰で支えた人物は? たとえば秀吉には弟がいたことを、どれだけの人が覚えているだろうか?
私はこの本を読むまで、羽柴秀長という名前は知らなかった。本書を手に取ったのときも「秀吉の弟でしょ? まあ、兄の威光で出世した人かな」くらいの認識だった。正直に打ち明けると、私は浜松市出身なので、そんなに秀吉自体が好きではない。
でも講談社現代新書『秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治』を読んだら、秀吉は好きではないままだけど、秀長がいなかったら秀吉の天下統一はありえなかった――そう断言できるくらい、秀長の役割は大きかったことに驚いたのだ。

大大名にして、政権の「調整役」

羽柴秀長は、最終的に大和・紀伊・和泉の3ヵ国合計で約73万石の大名となった。これがどのくらいすごいかというと、当時としては徳川家康に次ぐ規模だ。官位も従二位権大納言まで昇進し、「大和大納言」と呼ばれた。
豊臣秀長(春岳院蔵)
豊臣秀長(春岳院蔵)
ここまで大きな勢力を持ちながら、秀長は決して秀吉に牙を剥(む)かなかった。それどころか、豊臣政権の安定のために外様大名との調整役を担い、政権運営に欠かせない存在となっている。いわば「できる副社長」だ。社長(秀吉)が暴走しそうになったときにブレーキをかけ、取引先(外様大名)との関係を円滑に保つ。現代の企業でもこういう人、いますよね。
著者の黒田基樹先生は、駿河台大学教授で日本中世史が専門。2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の時代考証も務めている。つまり、秀長研究の第一人者が、最新の研究成果をもとに書いた本なのだ。ドラマを見る前に読んでおけば、理解が深まること間違いなしなのだ。

秀吉に「異を唱える」ことができた唯一の人物

本書を読んで最も驚いたのは、秀長が秀吉に対して「ダメ出し」ができた数少ない人物だったという点だ。
天下人となった秀吉は、晩年になるほど独断専行が目立ち、周囲の意見を聞かなくなっていく。でも秀長は、兄に対しても堂々と意見を述べることができた。
兄弟だからなせる技だろうか、これは秀長がただの「イエスマン」ではなかったからだ。権力者の周りにいる人間は、往々にして機嫌を損ねないように立ち回るものだ。でも秀長は違ったみたいだ。必要なときにはっきりと意見を言い、それでいて秀吉との信頼関係を保ち続けた。(一回勘気(勘当)されたみたいだが、スピード復縁している)
この本を読んでいると、「組織で働く上で大切なこと」がたくさん見えてくる。上司との適切な距離感、他部署との調整、部下のマネジメントなどなど。秀長の行動には、現代のビジネスパーソンにも通じる知恵がある。きっとこの本を読んだ社会人のかたは、具体的な組織名とそこにいる人の名前が浮かんでくることだろう。
そんな秀長が1591年に52歳で亡くなると、豊臣政権は急速に不安定化していった。朝鮮出兵の泥沼化、秀吉の暴走、そして関ヶ原の戦いへ。「秀長がいればこんなことには……」と思わずにはいられない。本書を読むと、秀長の死がその後の豊臣政権の命運を決めたのかもな、と感じる。

「外交」と「領国統治」の両面から見る秀長像

本書のサブタイトルは「大大名との外交と領国統治」となっている。これがまさに本書の特徴だ。
従来の秀長研究は、秀吉との関係性や軍事面での活躍が中心だった。でも本書は、秀長が大大名としてどのように領地を統治したのか、そして外様大名とどのように外交交渉を進めたのかに焦点を当てている。
熊野本宮大社の本殿(田辺市)
熊野本宮大社の本殿(田辺市)
紀伊南部制圧の際に協力を仰いだ熊野神宮
たとえば、秀長の居城である大和郡山城の周辺には、どのような家臣団が配置されていたのか。秀長はどのように年貢を徴収し、どのように家臣に恩賞を与えたのか。こうした「統治者としての秀長」の姿が、具体的な史料をもとに描かれる。
私がこの本を読んで一番勉強になったのは、「大名としての経営手腕」と「政権内での調整力」の両方を兼ね備えていた秀長の凄さだ。どちらか一方だけでも難しいのに、両方こなすなんて。武勲だって挙げている。しかも、史料を丁寧に読み解いていくと、秀長が家臣たちに慕われていたことも見えてくる。長宗我部や毛利などの外様大名からも法要されるくらいの人物であったわけだ。
読んでいくと、今まで存じ上げなかった秀長という人物に驚きを隠せない。「秀吉の弟」、でけど「一流の政治家・経営者」。こういう発見があるから、歴史の本は面白い。秀吉は好きじゃないままだけど、秀長はちょっと好きかもしれない。

大河ドラマ前に読んでおきたい一冊

2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、秀長役を仲野太賀さん、秀吉役を池松壮亮さんが演じるという。本書を読んでおけば、ドラマがもっと楽しめるはず。
「なるほど、このシーンで秀長が出てくるのはこういう理由か」
「あ、これが本書で読んだあの外交交渉だ!」
きっとそんなふうに、ドラマの背景にある歴史の深みを感じられるようになるだろう。試しに本書を読んでから予告編を見たら、秀長の重要性が理解できて、ドラマへの期待が一気に高まった。ぜひお試しあれ!
歴史好きはもちろん、「ナンバー2の生き方」に興味がある人、組織運営やマネジメントを学びたい人にもおすすめだ。秀長の外交手腕や調整力は、現代のビジネスにも通じるものがある。私も取引先の会社で「秀長みたいな人がいればなあ」と思ってしまう。
長い休みのときにでも『秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治』、ぜひ読んでみてほしい。歴史の見方が変わるはずだ。おそらくドラマも!

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レビュアー

宮本夏樹

静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。

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