秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治
私はこの本を読むまで、羽柴秀長という名前は知らなかった。本書を手に取ったのときも「秀吉の弟でしょ? まあ、兄の威光で出世した人かな」くらいの認識だった。正直に打ち明けると、私は浜松市出身なので、そんなに秀吉自体が好きではない。
でも講談社現代新書『秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治』を読んだら、秀吉は好きではないままだけど、秀長がいなかったら秀吉の天下統一はありえなかった――そう断言できるくらい、秀長の役割は大きかったことに驚いたのだ。
大大名にして、政権の「調整役」
著者の黒田基樹先生は、駿河台大学教授で日本中世史が専門。2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の時代考証も務めている。つまり、秀長研究の第一人者が、最新の研究成果をもとに書いた本なのだ。ドラマを見る前に読んでおけば、理解が深まること間違いなしなのだ。
秀吉に「異を唱える」ことができた唯一の人物
天下人となった秀吉は、晩年になるほど独断専行が目立ち、周囲の意見を聞かなくなっていく。でも秀長は、兄に対しても堂々と意見を述べることができた。
兄弟だからなせる技だろうか、これは秀長がただの「イエスマン」ではなかったからだ。権力者の周りにいる人間は、往々にして機嫌を損ねないように立ち回るものだ。でも秀長は違ったみたいだ。必要なときにはっきりと意見を言い、それでいて秀吉との信頼関係を保ち続けた。(一回勘気(勘当)されたみたいだが、スピード復縁している)
この本を読んでいると、「組織で働く上で大切なこと」がたくさん見えてくる。上司との適切な距離感、他部署との調整、部下のマネジメントなどなど。秀長の行動には、現代のビジネスパーソンにも通じる知恵がある。きっとこの本を読んだ社会人のかたは、具体的な組織名とそこにいる人の名前が浮かんでくることだろう。
そんな秀長が1591年に52歳で亡くなると、豊臣政権は急速に不安定化していった。朝鮮出兵の泥沼化、秀吉の暴走、そして関ヶ原の戦いへ。「秀長がいればこんなことには……」と思わずにはいられない。本書を読むと、秀長の死がその後の豊臣政権の命運を決めたのかもな、と感じる。
「外交」と「領国統治」の両面から見る秀長像
従来の秀長研究は、秀吉との関係性や軍事面での活躍が中心だった。でも本書は、秀長が大大名としてどのように領地を統治したのか、そして外様大名とどのように外交交渉を進めたのかに焦点を当てている。
私がこの本を読んで一番勉強になったのは、「大名としての経営手腕」と「政権内での調整力」の両方を兼ね備えていた秀長の凄さだ。どちらか一方だけでも難しいのに、両方こなすなんて。武勲だって挙げている。しかも、史料を丁寧に読み解いていくと、秀長が家臣たちに慕われていたことも見えてくる。長宗我部や毛利などの外様大名からも法要されるくらいの人物であったわけだ。
読んでいくと、今まで存じ上げなかった秀長という人物に驚きを隠せない。「秀吉の弟」、でけど「一流の政治家・経営者」。こういう発見があるから、歴史の本は面白い。秀吉は好きじゃないままだけど、秀長はちょっと好きかもしれない。
大河ドラマ前に読んでおきたい一冊
「なるほど、このシーンで秀長が出てくるのはこういう理由か」
「あ、これが本書で読んだあの外交交渉だ!」
きっとそんなふうに、ドラマの背景にある歴史の深みを感じられるようになるだろう。試しに本書を読んでから予告編を見たら、秀長の重要性が理解できて、ドラマへの期待が一気に高まった。ぜひお試しあれ!
歴史好きはもちろん、「ナンバー2の生き方」に興味がある人、組織運営やマネジメントを学びたい人にもおすすめだ。秀長の外交手腕や調整力は、現代のビジネスにも通じるものがある。私も取引先の会社で「秀長みたいな人がいればなあ」と思ってしまう。
長い休みのときにでも『秀吉を天下人にした男 羽柴秀長 大大名との外交と領国統治』、ぜひ読んでみてほしい。歴史の見方が変わるはずだ。おそらくドラマも!








