100歳まで生きることは楽しみ? それとも不安?
もし100歳まで生きるとしたら、65歳で高齢者と呼ばれるようになってから、さらに35年も人生が続くことになります。第二の人生、いや、第三、第四の人生が始まると言ってもいいでしょう。
楽しみですか? それとも不安でしょうか?
あるいは「そんなの、まだまだ先の話」と思っていませんか?
そんな中、御年93歳の評論家・樋口恵子さんがつづる“老いの実況中継”『93歳、あとは楽しげに生きる ヨタヘロな私の心得69』には、どの世代にも響く、“人生を楽しげに生きる”ためのヒントが詰まっています。
仕事に育児に忙しい「働き盛り」の30代の私でも、いますぐ実践したいと思える心得がいくつも見つかりました。
「楽しく」より「楽しげに」。93歳の今がいちばん幸せな理由
その語り口はユーモアと実感にあふれ、幅広い世代の支持を集めている樋口さん。「これが最後の本と思って書きました」と語る最新刊は、彼女の“集大成”とも言える1冊です。
理想論ではなく、「ヨタヘロ(=体も気力も思うようにならない)」な日々を真正面から描きながら、それでも"楽しげに生きる"ことの意味を語りかけてくれます。
「楽しく」と「楽しげ」は似ているようですが、意味は大きく異なります。
「楽しげに生きる」とは、楽しいことがなくても、自ら、果敢に、楽しみを見つけていこうという意志がなければ実現しません。年齢とともに、腰が痛んだり、もの忘れが多くなったり。そんな不機嫌のタネが増えていくからこそ、ちょっとだけ楽しいふりをすることが大事だと思っています。
ひとつは「人との関係がよくなること」。
ふたつめは「いいこと探しがうまくなること」。
そして最後は「頭の切り替えが上手になること」。
でもこれ、老後の話に限りませんよね。
不安は年齢に関係なく、誰もが抱えるもの。だからこそ、「自分で自分の心を励まし、自分で自分を幸せにする」樋口さん流の“楽しげな生き方”は、今を生きる私たちにこそ必要なのだと実感します。
「助けて」が言える力、持ってますか?
「遠くの親戚より、近くの他人」という言葉もあるように、現代の暮らしでは、身近に血縁者がいるとは限りません。さらに、日本人は「人に頼ること」がどこか不得手なようにも思えます。
学校、職場、子育て、家庭──どんな場所でも孤立しがちな今の社会では、「助けて」と言える力こそが、生きていくうえでの大切なスキルなのではないでしょうか。
けれど、だからといって人間関係を「べったり」にする必要はない──そう語る樋口さんの言葉(心得47「おたがいさまだけど、べったりしない関係を」)にも、私は救われました。
相手とちょうどよい距離感を保つには、精神的な自立や心のゆとりが不可欠です。
それは、私たち若い世代にとっても、向き合うべきテーマだと感じます。
・年齢に関係なく効く、幸せに年を重ねるためのヒント
心に残った心得のひとつに、「病気になっても、病人にならない」があります。
これは、どんな状況でも“生きることの主体を手放さない”という、樋口さんの強さを象徴する言葉です。
長生きは不安、老後は怖い──そんな空気が漂う今の日本。
でも、93歳のヒグチさんが「今がいちばん幸せ」と語れる社会なら、未来はきっと、今より明るくできるはず。
この本は、年齢に関係なく“幸せに年を重ねていく”ための、あたたかなギフトのような1冊です。
私も、樋口さんに倣(なら)って「楽しげに生きる」ことを、これからの人生に少しずつ取り入れていきたいと思います。