ふところの深さがすごい! 見たことのない神奈川に出合う
横浜に住んでいたことがあります。本当に楽しい毎日でした。オシャレなお店がたくさんあり、都心に出るのもラクな立地でありながら、海や山にもアクセスが良く、アウトドアの遊びも楽しめる。少し足を延ばすだけで箱根や湯河原の温泉に出かけることもでき、都内に住むいまよりも楽しみが多かったような気さえします。
神奈川は2018年、都道府県としては唯一、SDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業の両方に選ばれている県でもあります。日本を代表するSDGs先進県なのです。
『FRaU S-TRIP MOOK 見たことのない サステナブルな「神奈川」に出合う』は、そんな神奈川の人々の暮らし、取り組み、団体、企業を詳細にレポート。サステナブルな体験ができる旅を提案します。
カバーストーリーでは、横浜市出身のモデル・比留川游(ひるかわゆう)さんが“鎌倉殿”の古道をたどります。
鎌倉と横浜を結ぶ峠道「朝夷奈切通(あさいなきりどおし)」は、鎌倉殿を守る拠点だった古道です。鎌倉幕府の将軍、ひいては幕府を指す“鎌倉殿”。この道は、鎌倉殿に仕えた13人のひとり、和田義盛の息子の朝夷奈義秀が切り開き、執権・北条泰時が整備したとされています。鎌倉駅からバスで15分ほどのエリアなのに、切り立った岩壁や木々に囲まれた様子はまるで秘境のよう。
そして、路線バスに揺られて、十二所神社に参拝します。どの写真も、差し込む光がとても美しい。
インタビューでは、神奈川県で生まれ育った比留川さんが、地元にまつわる想い出と、神奈川の懐の深さを地元愛たっぷりに語ってくれます。
エリアによってまったく違った表情があるので、同じ県内ながらカルチャーの違いに触れられるのも神奈川ならでは。
横浜やみなとみらいといった都市のすぐそばに海も山もあり、どのエリアもそれぞれに表情豊か……。神奈川は本当に懐(ふところ)が深い! 本書は、歴史と文化が育んできた神奈川の「見たことのない顔」をいくつも見せてくれる1冊です。
知られざる神奈川
コンパクトな距離感のなか中にまちと海と山がある神奈川県。「海辺の暮らし」と「おとなの山歩き」を通じて「知られざる神奈川」に出合えます。
葉山、茅ヶ崎、鎌倉、大磯といった有名観光地が並ぶ神奈川の海沿い。そんな喧騒を抜けたところにあるのが海辺のまち・真鶴町(まなづるまち)です。
このまちの「美の基準」を含んだまちづくり条例は、バブル期に高層マンションなどの乱立を防ぐために制定されました。背戸道と呼ばれる細い路地や階段が多くみられる町並みは、ここにしかない大きな魅力となっています。
築70年の民家をリノベーションし、“泊まれる出版社”というコンセプトで活動する「真鶴出版」や、
「ミスターチーズケーキ」として知られるシェフ・田村浩二さんとともにフレンチの手法を取り入れたオリジナル干物を開発する老舗の干物屋さん「魚伝」などを訪ね、海辺の人々の暮らしに触れています。
「大人の山歩き」は、丹沢山地の菩提峠と鎌倉の源氏山を舞台に、自分の足で歩き、学び、五感で楽しむ山歩きの世界へ誘ってくれます。
神奈川県総面積の約6分の1を占める丹沢山地ですが、ここで紹介されているのは標高1000mに満たない初心者向けエリア。
自然環境を保全することで登山をはじめとするアウトドア体験の価値を上げ、登山道や山小屋などの施設の維持管理や、施設に従事する人材の育成につなげるなどの持続可能な仕組みづくりを促す。これはレスポンシブルツーリズム(=責任ある観光)としていま世界で注目されている。
登山者が集中する山域を避けるのもまた、レスポンシブルツーリズムの一環だそう。このエリアで、「登山」ではない山歩きを楽しむことも「サステナブルな旅」のひとつです。
アジサイや桜の名所として人気の鎌倉の源氏山を舞台に名水をめぐる鎌倉裏山ハイクは、ようやく涼しくなったいまだからこそ、挑戦してみたくなります。
選ぶべき靴や装備、トイレの場所も書かれているので、アウトドア初心者も安全に山歩きできます。知られざる神奈川の美しさに惹かれ、「すぐ行きたい!」と弾む気持ちを後押ししてくれる細やかな心づかいが嬉しい。
旅して、住んで、サステナブル!
神奈川では、内閣府が認定する「SDGs未来都市」に、県以外にも6市町が選ばれています。「6つの『SDGs未来都市』へOne Day Trip!」では、楽しみながら、ちょっとSDGsに貢献した気分にもなれる6つの市町を紹介しています。
“歴史に泊まれる”横浜市、
“自然を体験する”相模原市、
“資源を活かす”鎌倉市など、
すべてが「神奈川」というひとつの県におさまっているとは思えないほど、地域ごとの個性が色濃く浮かびます。
このように各地域に根づいたそれぞれの文化もある神奈川は、さまざまな人のライフスタイルにフィット。移住先としても熱い注目を浴びています。たとえば、葉山から都心へは電車で1時間程度。“神奈川に住む”ことは、都心で働く人にとっても魅力的な選択肢です。
「神奈川は移住天国だ!」では、葉山町に移り住んだ元アナウンサーの大橋マキさんや、
ファッション・フードスタイリストの宇藤えみさんをはじめ、
自分に合った場所で自分らしい暮らしを送る人々が、「住む場所」としての神奈川の魅力を語ります。
地元愛あふれる1冊
このほか、神奈川県民が愛してやまない個性豊かなグルメ&スイーツを集めた「ソウルフード・ジャーナル」や、
「ワーケーションやってみた」「東京からいちばん近い神奈川の温泉郷」など、
1冊まるごと、どこをとっても、神奈川の人々や企業の地元愛がギュッと詰まっています。日帰りもよし、泊りもよし、住んでもよし……。どんな形で神奈川にかかわる人でも楽しめるのが本書です。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019