近年、勢いのある新人賞として注目を集める小説現代長編新人賞から、ニュースターの誕生です。
水庭れんさんはなんと小説初執筆ながら、細やかな心理描写と巧みなストーリーテリングで発売前から注目を集めています。「うるうの朝顔」という不思議な花を咲かせると、自分が後悔している過去の場面に戻ることができるのですが、その過去は当時とは「1秒」だけ異なっています。その種を持つ墓守の青年・凪(なぎ)が、訪れる人々の悩みを受け止めるところから物語はスタート。見事花を咲かせ、憑き物が落ちたように語り始める彼らを見て、凪自身もつらい過去と向き合う決意を固めるのでした。
何かおかしいけど、その何かがわからない。些細なことゆえに気が付かなかったり、いつの間にか見ないふりをしていたり。そんな心のささくれを一緒に見つけてみませんか。
──小説現代編集チーム 伊藤蓮矢
レビュアー
小説現代編集チーム