前作『春、死なん』が野間文芸新人賞候補となり、新鋭作家として注目を集める、紗倉まなさん。人気AV女優としても活躍する著者が、現代の「ままならない恋愛」を描いた、「群像」掲載の3篇が1冊になりました。
本書で描かれるのは、年下の彼氏の浮世離れした逃亡劇に付き合って帰れないドライブを続けるアラサー女性や、友人の結婚式で夫の不倫相手の女と出会い、なぜか二人で失踪した夫を探す羽目になる妻、中学時代からの同性の友達に一途な思いを寄せ続ける女性など、理不尽な人間関係に振り回される女たちの、不器用すぎる恋の物語です。
職場や家庭で「生きづらさ」を抱えながら、あてにならない相手に一方的な熱情を募らせる彼女たちの姿を、著者ならではの観察眼と愛情とユーモアを交えた文体で、可笑しくもいとおしく表現した1冊。女性にも男性にもおすすめしたい、新感覚の小説集です。
──文芸第一単行本編集チーム 見田葉子
レビュアー
文芸第一単行本編集チーム