群像新人文学賞出身で、現在ベルリン在住の作家・多和田葉子さんは、2018年に『献灯使』で全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞。日本語とドイツ語で執筆し、世界30ヵ国以上で著作の翻訳版が刊行され、新しい世界文学の旗手として注目を集める著者です。その多和田さんが2016年以来、「群像」に連載されてきた連作長編三部作が、この10月刊行の『太陽諸島』でついに完結します。
本作は、ヨーロッパ留学中に故郷の島国(日本)が消滅してしまった女性Hirukoが、移民として生きるために発明した自家製の言語「パンスカ」を携えて、世界各地の仲間と出会う旅を描いています。様々な言語をもつ仲間たちの、国境を越えたつながりを描きながら、現代の日本や世界に対する深い洞察が織り込まれた物語は、まさに「新しい時代の神話」。世界文学の最前線を切り拓く作家の小説世界に、ぜひ触れてみてください。
──文芸第一単行本編集チーム 見田葉子
レビュアー
文芸第一単行本編集チーム