水島かおりさんは80年代に大活躍したアイドル。『ヤングマガジン』の表紙を飾ったこともありました。現在は女優業の傍(かたわ)ら、夫の長崎俊一監督の映画脚本なども手掛けていらっしゃいますが、本作は初の半自伝的小説です。
とにかくぶっとんでて、はちゃめちゃなお父ちゃん。調子が良くてお気楽で、借金こさえると蒸発して……。昭和によくいた、こんなお父ちゃんに辟易(へきえき)しつつも、咽頭がんでの壮絶な最期を看取るまでが綴られています。
アイドルになった経緯を加筆して頂きましたが、辛かったのが「ぶりっこの練習」で、辛口路線の中森明菜がうらやましかったというくだりはリアルです。
一族みな霊感の持ち主とかで、ご両親それぞれのご臨終のシーンでは不思議なことがたくさん起こり、後半はなかなかホラーな展開に。かつて水島さんがアシスタントを務めていたくらもちふさこさんから豪華イラスト入りの推薦コメントを頂き、素敵な船出になりました。
〈小説現代編集チーム 奥村実穂〉