直木賞作家・西條奈加さんの大人気時代小説「南星屋(なんぼしや)シリーズ」最新刊です。
舞台は江戸・麴町に店を構える家族経営の小さな菓子舗「南星屋」。諸国の銘菓を日替わりで供し、味の良さはもとより、江戸にいながらにして諸国を旅する気分を味わえると大繁盛。
とにかく、登場する和菓子がどれもこれも美味しそうなことと言ったら! 読んでいるだけで口中に餡や餅の舌触りと香りが立ちのぼる、まさに「読む甘味」。カバー装画の豆大福の何とも言えない和菓子感とも相まって、読後はきっと近くの和菓子店に走りたくなること請け合いです。
しかしこの物語、甘やかなだけではありません。南星屋一家はある大きな秘密を抱えていて、集まる客たちにもまた、人に言えない事情があって……。
家族の情、男女の機微、言うに言えない胸のうち。そんな人間のままならなさを上質な和菓子のようにやさしく包む、大人の甘味のような7篇です。
──文芸第二単行本編集チーム 森山悦子
レビュアー
文芸第二単行本編集チーム