日本で初めてコーヒーを飲んだ江戸時代の文人・大田蜀山人(おおたしょくさんじん)は、こんな感想を残しています。「焦げ臭くて味ふるにたえんものだ」。しかし、200年後の現在、多くの日本人にとって、コーヒーはごく日常的な飲み物になりました。
では、コーヒーは、いつ、どのように日本に伝わり、広まったのでしょうか。史料には、江戸時代にオランダ経由で輸入されると、長崎・出島の遊郭(!?)で、外国人とともに日本人が珈琲を嗜(たしな)む様子が描かれています。
本書は、オランダ商館医シーボルトがその普及を推奨し、遣欧使節や渋沢栄一が楽しみ、日本初のコーヒー店が誕生するといった膨大な記録を集め、その知られざる歴史を描きます。日本コーヒー史の元祖であり、関連書の隠れた「種本」ともいわれます。
今回、そんな生活文化史の幻の名著を、約40年ぶりに復刊します。解説は『コーヒーの科学』『珈琲の世界史』の著者である、旦部幸博先生です。
──学術図書編集チーム M・T
レビュアー
学術図書編集チーム