ここまで徹底したリアリズムに満ちた小説を読んだことがない!──青木理 (ジャーナリスト)
調査報道の醍醐味が味わえるノンフィクションのような推理小説。ほんとうに面白い。──佐藤優 (作家)
忘れてはならない。未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する
「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。
圧倒的な取材と着想で描かれた、全世代必読! 本年度最高の長編小説。
著者メッセージ
十六年前、大学の食堂で「グリコ・森永事件」の関連書籍を読んでいたとき、初めて“子どもの声を録音したテープ”が犯行に使われていると知った。その子どものうち一人は、私と同世代だ。関西の街のどこかで、彼とすれ違ったことがあるかもしれない……。そう考えると鳥肌が立ち、以来、私はずっとテープの子どもの話を書きたいと思い続けてきた。
この比類なき未解決事件は、昭和という時代、企業や株、警察組織、ジャーナリズム――などの要素が複雑に絡み合ってできたものだ。大学卒業後に新聞記者になった私は、そういった社会を構成する一つひとつの事柄を肌で感じ、記事にしてきた。大学の食堂で小説の着想を得てから十年後、私は新聞社在職中に小説家としてデビューした。それでもまだ、この物語を捉えきれなかった。
転機となったのは、自分に娘が生まれたことだ。日々成長する彼女と接するうちに「この宝物を犯罪に利用するなど考えられない」と実感した。ユニークな挑戦状を駆使して警察を揶揄し、マスコミを利用して大衆を巻き込んでいった「かい人21面相」は、一面でルパン三世のように「憎めないワル」として見られる向きもある。だが、それは断じて違う。彼らは企業の社長を誘拐し、脅迫する会社に火をつけ、青酸菓子をばら撒いた凶悪犯だ。
今なら書ける。そう思った私は、自分で複数の資料をつくり、事件現場を歩き、関係者の話を聞き、登場人物の気持ちになってイギリスの三都市を巡った。そうしてパズルのピースを集めていくうちに、今、この昭和の未解決事件を描く動機は、やはり「子ども」にあると確信した。
本作品は被害企業などを仮名にしているが、事件の発生日時、場所、脅迫・挑戦状の文言、その後の報道を史実通りに再現している。「実際にこういう悲しい人生を歩まざるを得なかった子どもがいるかもしれない」との思いは、今も胸の内にある。
事件への考察はもちろん、章を追うごとに加速していく展開もこの小説の特長だ。大人が本気になって読める小説を目指し、持てるものを全て出し切った。
日本中をパニックに陥れた犯人や彼らに利用された子どもたちが、今このときも自分の半径十メートル以内で呼吸しているかもしれない。読者のみなさんには、心の準備を済ませてから、最初の一ページを開いていただきたい。
プロフィール
塩田武士(しおた・たけし)
1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社に在職中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。同作は第23回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)も合わせて受賞した。
他の著書に、『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』がある。
『罪の声』に、全国の書店員さんから熱いコメントをいただいています!
●ただ、ただおもしろい。おもしろすぎて読む手が止まらない。このもの凄い傑作を多くの人と共有したい。あの事件は決して忘れられない。なぜこれほど心を揺さぶられるのでしょうか。後半、結末に辿り着くまでは、圧巻でした。あの事件の1つの答えは、この中にきっとあると思います。
──丸善横浜ポルタ店 柳幸子さん
●プルーフ、大変楽しく読ませて頂きました。有り難うございました! 「どくいり きけん たべたら しぬで かい人21面相」「キツネ目の男」昭和最大の未解決事件<グリコ森永事件>の真相が、白日の下に!? 始めは、エライ懐かしい事件が題材やな、くらいに気楽に読んでいたのだが、読み進む内に、著者が主人公の曽根俊也なのではないのかと、思えるほどリアリティを感じ震えた。確かに事件は、時効でも巻き込まれてしまった者も含め、関係者の多くは、<今>もこの時を過ごしているのだ。そう思えると、切なさが溢れて、闇の重さに心が痛んだ。関西で重点的に売っていなければならない作品だと思います!
──大垣書店高槻店 井上哲也さん
●31年前に起きた未解決事件。真相解明とともに紐解かれる複雑にからみ合った人間模様に心が揺さぶられる。
──ジュンク堂書店松山店 藤原七都恵さん
●まるで映画を観ているように映像が浮かんだ、というと陳腐な表現になってしまうけれど、その通りなのだから仕方がありません。彼らと共に謎を追い、彼らと共に胸の痛みを分かち合った気分です。
──宮脇書店本店 藤村結香さん
●ページを捲るたびに未解決事件の真相に迫っていく物語の展開に没頭してしまい、寝る間を惜しんで一気に読んでしまった。どんな事件の背景にも、世間には公にされていない、事件の影響を被ってその後の人生を蹂躙された第三の犠牲者の存在を忘れてはならないのだということを読後、目を閉じて大きなため息を吐きながら、深く考えさせられました。
──文教堂書店青戸店 青柳将人さん
●不幸にも昭和の片隅に置き去りにされてしまった子どもたちの未来が、30年の時を越えて、ゆっくりと動き出す。「未解決」であることが問題なのではなく、人間の未来に蓋をして閉じ込めてしまったことこそが最大の事件だったと気付かされる。
──くまざわ書店南千住店 阿久津
武信さん
●田中角栄しかり、人であれ、社会であれ、善きにつけ、悪しきにつけ、昭和という時代。エネルギーが溢れた作品です。
──水嶋書房くずはモール店 和田章子さん
●新聞社勤務を経た著者であるが由に、臨場感がありました。
──みどり書房桑野店 井戸沼たか子さん
●俊也と阿久津がそれぞれ事件を追う内に近づいていく過程は読んでいてハラハラしました。過去の事件の関係者1人1人が胸の内に据え続けた罪悪感や虚しさや苦しみを垣間見て胸が痛くなりました。
──萬松堂 吉岡彩佳さん
●拝読して、とてもとても辛いテーマで、最後は涙しました。実際のグリコ・森永事件では、自分が子どもの時だったため、あんなにも世間を騒がした未解決の一大事件にもかかわらず記憶がありませんでしたが、自分が子どもの親の立場となった時には、どんなに恐ろしい事件であったのか震える思いです。
──書泉ブックタワー 江連聡美さん
●追うものと追われるもの、2つの視点から事件を追究していくスリリングさゾクゾクしました。過去から現在、未来へ事件が時効をむかえても、当事者と家族の時間は続いていくのだと、改めて気付かされました。
──鹿島ブックセンター 山田明日香さん
●主人公が事件の真相に迫る緊迫感たっぷりのやり取りに読む手が止まりませんでした!! 物語がきっかけとなり、モデルとされたグリコ森永事件も新たな糸口が見つかるのではないか、そんな予感が作品から立ちあがってきました。
──丸善名古屋本店 竹腰香里さん
●グリコ森永事件が起きた頃、少し大人だった私、そうそう“キツネ目の男”がテレビの画面に映し出されるたびに、世の中は怖いなあと思ったものでした。そうか、あの事件は未解決のままで、本当のところはどうだったのだろうと、当時の記憶を思い出しながら読んでいたはずなのですが、思わず「こうだったのか?」とドキドキしながら、つい真剣にのめりこんでしまいました。『盤上のアルファ』、『ともにがんばりましょう』など読ませていただきましたが、今回の作品はものすごく奥が深いです。あの事件の記憶がある人々にとっては、とても興味深い一冊にできあがっていると思います。あれから30年、真相はどこにあったのか? 今なら、解明してもいいのではないかと思います。
──有隣堂伊勢佐木町本店 佐伯敦子さん
●物語にぐいぐいと引き込まれ、事件当時のことを思い出しながら一気に読みました。
──ジュンク堂書店名古屋栄店 藤堂恒平さん
●未解決の事件に挑むような綿密な事実関係の取材と登場人物たちの心の機微に、何度も自分の呼吸を整えながら読了しました。現実と小説の境って何だろう……小説の表現する世界が果てしなく魅惑的なものに感じました。
──喜久屋書店阿倍野店 市岡陽子さん
●読み終わって改めて表紙を見直して
いろんな想いにまた心揺さぶられて。『64』(横山秀夫)を読んだ時以来の身震いがしました。
──紀伊國屋書店梅田本店 小泉真規子さん
●こつこつと成果の見えない取材を積み重ね真相にたどり着こうとする記者阿久津。突然父の遺品から家族が事件に関与している疑いが生まれ、真実を確かめるため調べ始めた俊也。すでに時効となった事件を、糸口がなかなかつかめない取材を続ける阿久津と、真相を知ることで家庭が壊れるのではないかという恐怖に苦しむ俊也。実際の事件を題材に描いているせいか、それぞれの心情が嘘偽りなく心に響く作品だと思う。そして、真実を公にさらすことに何の意味があるのか考えさせられた。記事として公にすることで少しでも未来に同じ負の事件が起きないように、そんなふうに考えさせられた。
──丸善丸の内本店 三瓶ひとみさん
●ノンフィクションのつもりで読んでしまうフィクション。どこまでも真実に思える読書体験間違いなし。
──三省堂書店有楽町店 水口由紀さん
●重厚にして濃密。何と雄弁な作品だろう!時代の記憶を凝縮したこの一冊は、文学史に刻まれる価値がある。
──三省堂書店神保町本店 内田剛さん
●一人でも多くの小説ファンが『罪の声』と出会えるようにすることが、書店員としての私の使命だ。こんな傑作を見逃させてはいけない!
──MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん
●事件の地元関西で一番売りたい本です。
──旭屋書店なんばCITY店 城崎友博さん
●ィクションでなければ書けなかった「本物」のグリコ森永事件がここにある!
──八重洲ブックセンター本店 内田俊明さん
●小説(フィクション)であることを忘れてしまうほどのリアルさにゾクゾクしました。
──ジュンク堂書店京都店 村上沙織さん
●犯罪が起きたとき、その事件の犯人の家族についてまで想いをめぐらす人間はおそらくほとんどいない。本作はフィクションである。しかし、これがフィクションではないと誰が言い切れるだろうか。これまで、題材は違っても、常に「人間」を丹念に描いてきた塩田武士の真骨頂!!
──大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん
●「罪の声」に耳を傾けたが最後、逃れられない劇毒のドラマ。
──さわや書店フェザン店 松本大介さん
●過去の秘密を足で暴く新聞記者。忘れていた過去を取り戻そうとする平凡な男。たぐる糸の先でふたりは出会い、その時すべての謎が明らかになった。策士・塩田武士が練りに練ったグリコ森永事件の「真実」は「事実」を超えた。驚きのあと、切なさが残るミステリの快作。
──ジュンク堂書店大阪本店 角石美香さん
●この小説を書くために「塩田武士」は生まれたとしか思えない。
──三省堂書店池袋本店 新井見枝香さん
●自分が生まれる数年前に起こった事件。名前を聞いたことがあるくらいで、遠い世界の出来事のように思っていた。その事件が私と同世代の主人公達の視点から紐解かれていく事によって、私自身が今まで知らなかった私の両親の若かった時代の呼吸を初めて肌身に感じた。真実は時空を超える、まさにそんな体験だった。
──ジュンク堂書店大阪本店 持田碧さん
●「小説とは何だろうか」読んでいる間、ずっとそのことを考えてました。リアリティを突き詰めると、それはもはや文学なのかノンフィクションなのか、見かけ上分からなくなる。それくらい迫真の物語であり、そしてそこまで到達したからこその「文学的香り」に満ちている。
──ジュンク堂書店大阪本店 博田宏之さん
●フィクションとは思えない圧倒的リアリティに冒頭から一気に引き込まれる。あの時代を知る人にも知らない人にも、お薦めします!
──紀伊國屋書店グランフロント大阪店 堀江和子さん
●これは小説なのか? と思いながら、ページを繰る指をまったく止めることができなかった。読み終えて、小説にしかたどり着けない真実があるのだとはじめて知った。
──三省堂書店神保町本店 大塚真祐子さん
●今年一番のイッキ読み!引き込まれます!
──ブックファースト京都店 井辻吉博さん
●読み進めるごとにあの時代にタイムスリップ。
──ブックファースト阪急西宮ガーデンズ店 江連昌利さん
●もはや、私の中では未解決事件とは言えない。
──ブックファースト阪急西宮ガーデンズ店 森茜さん
●子どものころ、店頭からあの有名なお菓子が消えた。事件の真相は謎のままだった。この本を読んで、著者の想像力と調べ上げた情報に圧倒された!!あの事件はこういうことだったのか!と
──ヤマト屋書店仙台三越店 鈴木典子さん
●作家の想像力が聞き取った声は、こんなにも胸を揺さぶり、抉る。これは事実ではなくとも、真実だ。闇からひとつの声を掬い取る、小説の力に圧倒された。
──紀伊國屋書店新宿本店 今井麻夕美さん