近年、隆盛を誇る「シスターフッド」というジャンル。旗手として書き続けてきたのが柚木麻子さんです。『ランチのアッコちゃん』や『BUTTER』でご存じの方も多いのではないでしょうか。
そんな柚木さんが辿り着いたのは、シスターフッドで問題がすべて解決できるわけではない、という気づき。女性同士が助け合うのはすばらしいこと。けれど、政府や組織が解決すべき問題を個人の知恵や優しさによる解決に頼るのは、何かずれているのでは? そうして生まれたのが『オール・ノット』です。
没落した一族の生き残り・四葉(よつば)が、苦学生の真央(まお)に宝石箱を託すことから始まる物語。期待に反して宝石箱に詰まっていたのはほとんどが偽物や価値の低い宝石でした。しかし、真央を救ったのはお金ではなく──。ラストシーンは20年後の未来。果たして真央の人生はどうなっているのか。三歩先の未来を見ている柚木さんだからこそ書けた傑作長編です。
──小説現代編集チーム 落合萌衣
レビュアー
小説現代編集チーム