小学校での英語教育を舐めてはいけない。親が!
「小学校で勉強する英語なんて、お遊びみたいなものでしょ」
「そりゃ英語は早いうちに始めたほうがいいと思うけど、本番は中学からでしょ」
そんな認識をお持ちのお父さん、お母さん。今すぐあなたのところに飛んでいき、膝詰めの涙目で「そんなのんきなこと言ってる場合じゃないから~!」と説得したい。小学英語ありきの中学英語。小学英語を軽んじると、中一で親子そろって泣くことになります。脅したいわけじゃありません。かくいう私の中学1年生の子どもが、英語でつまずいているからです。よくよく聞くと「小学校の時から英語きらーい。意味わかんない、発音できない、全部わかんなかった」と言います。なぜそのことに気づかなかったか? 私自身が「小学校の英語なんて?」と舐めていたからです。
小学校での英語必修化は2020年からスタートし、3・4年生で週1コマ程度の授業が行われます。それが5・6年生になると週2コマ程度になり、通信簿に評価がつきます。ちなみに5年生で学ぶ漢字が185字、6年生が181字に対し、小学校卒業までの英語教育で600~700語ほどの英単語習得を目指します。漢字と英単語を比較するのが妥当かどうかわかりませんが、国語よりはるかに数が少ない英語の授業でこれだけのことを学び、中学校では小学校で学んだ英語をベースに授業が進められる。つまり、小学校での英語必修化は「早いうちから英語に慣れ親しみましょう」というレベルではなく、実質的な英語教育の前倒しなのです。小学校で英語の授業が始まったら、親は子どもの理解度を正確に見極め、しっかり英単語を覚えさせなければいけません。そのためにはどうすればよいか? その解答のひとつを、この本で見つけました。
I like apples.
どんなに英語が苦手、という日本人でも、
これくらいの英文は読めますね。
ネイティブであれば幼児でも、言えて読めて書けます。ですが、この1分でできることを1年かけているのが、日本の英語教育。
そのムダをいっさいなくしたのが、ひろつるメソッドの英語学習法です。文法なし。和訳なし。
ローマ字学習なし。
書き取りなし。
歌とゲームなし。
ひろつるメソッドとは、本書の著者である廣津留真理が、大分の公立小中高から塾なしでハーバード大学に現役合格した娘への家庭学習指導経験から確立されたものです。本書は、「英語は単語暗記が9割」という著者が、英単語を「読める」「言える」「聞ける」「会話で使える」ように特化したもの。600語の単語と日常会話フレーズ152を収録し、「英語を英語として直接暗記する」ことを目指します。文法や和訳なしに、英語を丸呑みするイメージです。
暗記の方法は、音声を聞きながら、英単語に指を添えて、なぞり読みをする「オーバーラッピング」と、会話文の音声を聞きながら、英語を見ないでかぶせるように声を出す「シャドーイング」のふたつ。極めてシンプルです。幼児や小学校低学年でも1日5分、週7日でやれば6週間(土日は休んで週5日でやれば8週間)で、中1までの英単語を覚えられるようになっています。
実践! その効果は?
今回、英語につまずいている我が子にこの本を渡し、実践してもらうことに。そして使い方を読んでの第一声は「これ、スペルを書きとらなくていいの?」でした。以前に「暗記、イコール、なんべんも書いて覚える」と私に言われ、「なにそれ、修行じゃね? と思ってた」そうなので、書き取りがないことに気持ちのハードルが下がったようです。また、子どもの様子をそばで見ていて「シャドーイングには若干慣れが必要なのかな」と思いましたが、この本のやり方動画を何度か見せてクリアできました。
とりあえず、春休み期間中の2週間で試してみて、感想を聞き取りました。曰く、
「bananaとかorangeとか小学校で習った英語は、いまさら~って感じだけど、時間とか反対語とかテーマごとにステージが分けられているので頭の中で整理される感じ。読みと意味が頭に入りやすい気がする。おさらいにいいかなぁ」
なにが「いまさら~」だか……。そこでつまずいていたクセに、なんか上から目線でイラッとします。
「最初から1日5分でいいって言われると気がラク」
正直、親としては「もっとやれ」と言いたいところ。しかし、ひろつるメソッドのルール①は1日5分。学習は子どもが飽きる1分前にやめること。そのほかに、②大人が子どもの隣にいること ③説明しない ④発音は気にしない ⑤abcの書き取りは不要 ⑥子どもを試さない ⑦100%ほめる とあります。しかし、子どもの隣にいると親はどうしても口を出したくなります。「覚えたか?」とテストしたくなり、単語の別の意味を教えたくなり、発音を直したくなり……と、誘惑が多い。そこはじっと我慢する。子どもを信じる。これが本当に難しい。それから⑦の100%ほめるも難しい。中1の子どもに「すごいね!」「やったね!」と言っても、「なに? そのとってつけた感じ」という目で見られました。これについては、褒めれば喜んでくれる小学生のうちに始めることの有利さを感じます。
「会話文は使える感じがする。単語を差し替えたら、いろいろ使えそう」
キタ───! 待ってた、前向き発言! 日常会話の簡単な文だからこそ、それを使いこなし単語量が増えれば表現力もアップする。それが自信につながれば「英語きらーい」から抜け出す糸口になるというものです。
なにぶん2週間という限られた時間の話なので、英単語600語と日常会話フレーズ152の暗記というところまでは至っていません。でも、このままひろつるメソッドを続行したいと思っている次第。あわせて、私の褒め言葉のバリエーションを広げる試みも続けようと思っています。
レビュアー
関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。