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2023.03.28

レビュー

【女性の発達障害】ADHD、ASD、グレーゾーンの人の生きづらさをやわらげる方法

性格のせいじゃない「生きづらさ」

忘れ物が多い、仕事の締め切りを守れない、人とうまくつき合えない。大人の女性にこのような特徴があると、「そういう性格なんだな」と捉えられがちです。本人でさえ「性格のせい」と考えて自分を責めたり、「自分は周囲の人と違うので、それを知られないように気を張って生活している」など“生きづらさ”を感じていることもあります。しかしそこに「性格のせい」ではない理由があるとしたら……。



発達障害が題材のマンガが話題になるなど、「発達障害」という言葉やその特性が広く知られるようになりました。発達障害は「主に子どものうちに診断されるもの」と考えられがちですが、大人の女性にもその特性をもつ人が少なからず存在します。
『女性の発達障害 困りごとにどう向き合うか』は、そんな発達障害の特性をもつ女性の「生きづらさ」の原因をひも解き、本人はもちろん、家族や友人、仕事で関わる人たちも日常を快適に過ごすためのアドバイスをくれる1冊です。この本の監修者・医学博士の司馬理英子先生はこう言います。

子どものころからこうした困りごとや失敗が多く、大人になってからも変わらないという場合、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの特性が影響している可能性があります。

その「生きづらさ」には、性格以外の理由があるのかもしれません。この本は、発達障害の特性をもつ女性の毎日が少しでも楽になるよう「日々の生活の困りごとへの正しい対処法」「自分をいたわり、励ます方法」を教えてくれます。

「女性らしさ」と発達障害

発達障害の傾向は男女問わず現れますが、この本が「女性の発達障害」にフォーカスしているのには理由があります。

発達障害の人は、社会が求める女性らしい役割、例えば家事や育児、気づかいなどが特に苦手です。



「共感するのが得意で、雑談が大好き」「人づきあいが上手」「家事の段取りや掃除が得意」……。「大人の女性」に旧来のジェンダー観に沿ったイメージをもつ人は多いでしょう。しかし、発達障害の特性による言動やふるまいは、このような「女性らしい」イメージとはギャップが大きいうえ「妻」「母」として期待される役割を果たすことも難しい場合もあるといいます。

本書の「2 プライベートの困りごと ――こんなとき、どうする?」では、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)など、発達障害の特性が大人の女性の生活の中で現れると、どんな“困りごと”につながるのかを挙げています。


「ルーティンが苦手」「すぐに気が散る」「段取りが苦手」などとされる「ADHD」。その特性があると

ルーティンが苦手な人は、掃除、洗濯、料理などの家事がうまくまわりません。近所づき合いは女性の役割のことが多く、うっかりして対外的なことがおろそかになると、人づき合いに支障をきたします。

自分だけの問題では済まず、家族をはじめ周囲の人の生活にも影響が出てしまいます。



人と関わること、コミュニケーションが苦手とされるASDの場合は、

特に女性どうしの雑談は話題がひんぱんに変わり、感情を扱うことも多いので、対応するのがむずかしいのです。

など、対人関係に影響が大きく、人づき合いが苦手な人も多いようです。

「なるほど、これは確かに生きづらいな」と感じます。子どもであれば「ちょっとうっかりした子」「引っ込み思案な子」で済むことも、大人の女性の場合は違います。「歳を重ねるにつれ、自分を見る周囲の目が厳しくなった」「気がきかない、女性らしくないと言われる」ことに苦しんだり、人から距離を置かれてしまうことにもつながります。

困りごとがリアルな「あるある」なので、「これは私のこと? もしかして、私も発達障害なのかも……」と、病院の受診を検討する人もいるかもしれません。本書では、発達障害に関する医療機関の受診や、治療について、詳しく解説されています。
「発達障害があるか調べるには、どの科を受診すればいい?」「まずは相談したい。カウンセリングを受けるには?」「治療は、どんなことをするの?」といった、人に相談しにくく「病院に行くための壁」になりうる疑問はほぼ解消されていると思いました。

周囲の人は「私の事情」を知らない

普段の生活の中での“困りごと”にどう対処するか、特性を踏まえた具体的な方法も書かれています。家事や健康管理といったプライベートはもちろん、


「3 職場や学校での困りごと――こんなとき、どうする?」では、発達障害の特性をもつ女性が、ミスをなくして職場や学校で回りとうまくつき合う方法がまとめられています。「心得ておくこと」として「周囲の人は『私の事情』をよく知らない」ことが挙げられているのですが、


本書を読むと、本人が「『私の事情』は知られていない」と心得ることと同じくらい、周囲も「『事情があるのかも』と考えてみる」ことも大事かもしれない、と感じます。
発達障害の特性をもつ女性が「なぜかできない自分に対する自己評価が下がっていたけれど、発達障害だと診断されたことで、今までの困りごとの理由が見えて楽になる」ことは多いと聞きます。同じように、「性格」ではなく「そういう特性なのだ」と、周囲が理解することで、減らせる摩擦があるように思うのです。

この本の中には、発達障害とその特性への理解を深める手がかりが多く記されています。発達障害の特性をもつ人だけでなく、その周囲の人の助けにもなる1冊だと感じました。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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