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2023.02.21

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大腸がんになると人生はどう変わる? 名医が疑問に答える決定版!

ここ数年、友人や知人から大腸がんの経験談を聞くことが増えた。幸いなことに治療は成功し、今では全員が日常生活へと復帰した。そのため「治せるがんも増えているんだな」という気持ちを抱いた一方、大腸がんに対する自分の知識があやふやなものでしかなかったことにも気づかされた。そもそも大腸がんとはどんな病気で、現在はどんな治療が主流になっているのだろうか。

本書は、以前刊行された『大腸がん 治療法と手術後の生活がわかる本』を再編集したもので、62のQ&Aから成る5つの章で構成されている。冒頭には、「大腸がんになると人生はどう変わる?」と題したチェックテストがあった。

私が間違えたのは、1と6。手術後にはそれなりの食事制限があると思っていたし、肛門近くのがんに対する治療は人工肛門一択しかないだろうと考えていた。実際はいずれもそうではなく、自分の思い込みがあぶり出される。また回答には関連するQのページも記載されており、間違えた部分については特に意識して読むことができた。

監修者は1984年に山形大学医学部を卒業後、都立駒込病院(現、がん・感染症センター都立駒込病院)で勤務し、外科医長や大腸外科主任、外科部長を担った。現在は東京都立大久保病院にて、副院長を務めている。外科の中でも特に大腸がんの診断や治療を専門とし、これまでにいくつもの書籍を執筆してきた。

さて1章では、大腸がんの種類や検査方法、進行度についてが、2章では現在用いられている治療法やセカンドオピニオンの取り方などが、イラストとともに解説されている。ここまでが本書の半分ほど。残りの半分は、手術後の暮らしに関連する話が占めている。

というのも大腸がんは、他のがんと比べると治療成績が良好で、ステージによっては5年後の生存率も高いという。だからこそ術後の体調と暮らしをより良く保ち、排せつに関する変化やトラブルへ柔軟に対応していけるかどうかが、治療の上でも重要なポイントとなっている。3章と4章では、排便への影響や人工肛門に関する情報、日々の食事や入浴についての対処法など、いずれも他人には少し聞きづらい、でも知っておきたい知識が、具体的にこまかく取り上げられていた。

中でも、知って良かったと感じたのは、Q40「外出先で人工肛門の便を処理する場所はありますか?」に対する回答だった。2006年に施行されたバリアフリー新法によって、街中では人工肛門や人工膀胱を持つ人=オストメイト用のトイレも多くなってきた。ただ私は、外出時にたまたま見かけることはあっても、どこにそれがあるのかまでは知らなかった。はたしてどんな場所に設置されているのか。調べる方法があるという。

設置場所については、インターネットの「オストメイトJP」のウェブサイトで調べることができます。外出する前にチェックして位置を確認しておくと安心です。緊急の場合は、携帯電話やスマートフォンでも検索できます。

ほかにも、人工肛門に関する専門的な相談ができる「ストーマ外来」の存在や、オストメイトの経験談を聞くことができる会の存在にも触れることで、頼れる先をいくつも提示してくれていた。

このように本書では、大腸がんそのものだけでなく、「病後についても知っておきたい」という気持ちに、すみずみまで応えてくれる。いつかの自分や自分の大事な人たちが、もし病を得て生活が変化したとしても、この一冊があればきっと前向きに過ごしていくことができるだろう。

レビュアー

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田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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