「更年期」のためになにをすればいい?
生きていれば遅かれ早かれ必ずやってくる「更年期」を、ここ数年とても警戒している。いや、私だって更年期に向かって「帰れ」とはいわない。どうぞどうぞいらっしゃい、ただし、ここはひとつ、穏便にお願いしたいです。
そう、「更年期にまつわる症状は個人差が大きい」という一点が、私を悩ませている。
加齢にともなって心身が変わることは季節がめぐるのと同じだ。冬が近づけばふっくらとあたたかいコートで体をすっぽり覆いたい。それと同じ気持ちで更年期に備えたいが、私の更年期が実際のところいつどんな状態になるかサッパリわからないことに困っているのだ。どうも「怖い!」や「心配!」が先走る。この正体不明のお客さんを迎えるにあたって、取り急ぎ何を準備すればいいのだろう。
『40代から始めよう! 閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』は、そんな悩める私のよき相棒になってくれた。ちょうど知りたかったことがつまっている! 著者の吉形玲美先生は婦人科と女性医療(更年期医療)を専門とする医師だ。かかりつけの先生とじっくりお話をする気持ちで読んだ。
まず「閉経マネジメント」という言葉がとてもいい。
女性の一生のうち、体が根本的に変化するのは閉経のときです。それまで何十年間も全身を駆けめぐり体を守ってくれていた女性ホルモンが、徐々に減少を始めて働きを休止する閉経は、女性にとって長年の味方を永遠に失う一大事。心身に不調をきたすのも無理からぬことです。そこから自分を解放し、ラクにしてあげる作業。それが閉経マネジメントです。
40代以降は女性ホルモンと呼ばれる「エストロゲン」の分泌量がどんどん減っていく……かと思いきや、上がったり下がったり。
40代からグラングランに揺れているじゃないか。困るよ、ビッグウェーブすぎる。では、吉形先生がおすすめする閉経マネジメントとはどんなものであるか。
マネジメントの柱は大きく2つ。一つはゆらぎ始めた「女性ホルモン」をコントロールすること。もう一つは、女性ホルモンの減少により影響を受ける「骨の強さ」をマネジメントすること。この2つ、するとしないとではその後の人生に大きな差が出ます。
閉経マネジメントのターゲットは女性ホルモンだけにあらず。「骨の強さ」? でもたしかに「閉経後は骨粗しょう症に気をつけましょう」とよく耳にする。よく耳にしていたのに、自分で想像する「更年期の心配」のチェックリストに骨の項目が存在していなかった。
皮膚につつまれて、さわるとかたい骨だけど、やがて確実に骨密度は下がり、体に変化を与える。その一例がこちら。わかりやすい。
「うわべだけがんばっても意味がない」という言葉が胸にずーんと響く。今まで「骨粗しょう症に気をつけましょう」と言われたって「どう気をつければ……」とボンヤリ困ってそのままスルーしていたことを思い出して、さらにずーんとなるが、本書では骨密度の低下に対する具体的な対策が示されている。こちらはあとで紹介したい。
そして「女性ホルモン」のコントロールについても、最近よく耳にする「ホルモン補充療法(HRT)」と「エクオールサプリメント」を軸に、たしかな対処法を教えてくれる。
私はすでにエクオールサプリメントを数ヶ月前から飲み始めて、いつか必要になったら標準治療のHRTもやろうと思っていた。ただ、HRTを始めるタイミングがよくわかっていないし、不安も少しある。HRTと低用量ピル(OC)の違いも知りたい。なので、本書でとことん掘り下げた解説と臨床の現場での体験談の両方を読めてとてもありがたかった。
「いつ」「何を」するかが重要
本書は、「女性ホルモン」と「骨の強さ」のマネジメントをライフステージごとに紹介する。
それぞれの対策は、「いつ」「何を」するかがとても重要になります。
ターゲットと対策を明確に定めているのが本書の頼もしい点だ(仕事の場でもこういうマネージャーがいるとスムーズに進みますよね)。ライフステージの分け方と対策の方針は次のようなチャートでわかる。
40代のプレ更年期世代の場合は「その不調の原因は、更年期ではなくPMS(月経前症候群)かも?」といった指摘も。
一例として、更年期世代かつ更年期症状が気になる人の「アクティブマネジメント」を見てみよう。大方針はこちら。
女性ホルモンの減少を薬剤で補い、女性ホルモンのゆらぎで乱された体調を少しずつ落ち着けていきます。
骨密度の低下傾向は、更年期障害の軽重とは関係がありません。アクティブマネジメントに該当する人も、ライトマネジメントと同じように骨密度の維持に努めましょう。
このステージではホルモン補充療法(HRT)がマネジメント手法の第一候補となる。そして私が本書でとても好きな点は次のようなところ。最初に大方針を示し、それに続いて丁寧なフォローを入れてくれるのだ。
更年期障害の標準治療であるHRTを詳しく知りたい人は71ページへ、エクオールとHRTの使い分けを知りたい人は116ページへ、そしてホルモン検査については36ページへ。読む人の関心や心配にあわせた適切なガイドになっている。
骨強度のマネジメントって?
閉経マネジメントの大きな二本柱のうちのひとつ「骨強度マネジメント」についても紹介したい。本書で吉形先生は、骨粗しょう症が知らないうちに進行すること、そして骨の強さを維持する重要性を説く。
私たちの目標は「70代以降の健康寿命を延ばす」です。さあ、この目標を達成するには?
こちらもマネジメントの方針がとてもわかりやすい。食生活の大切なポイントは子どもの頃から変わらない。運動については、年齢に応じて強度を調整すればよい。ここで「あ、そういうこと?」と私はちょっと油断しそうになる。でも、意識して生活するのとしないとのじゃ大違いだ。これまで骨のことを一切かえりみずに生きてきたから、これからは「骨にとって大切なのはどっち?」と考えて生活したい。コツコツと対策を重ねれば、きっと結果に繋がるはずだ。
干しエビと冬瓜を炊いたのが急に食べたくなった。
もうひとつ、閉経マネジメントに取り組む上で重要だと感じたのは「検査」だ。繰り返しになるが、骨の状態なんて自分じゃ全然わからない。少なくとも私は自分の手首の骨をさわって「骨密度が下がってる!」なんて、ぜったい実感できない。女性ホルモンの変化や自分の閉経の時期だってサッパリ想像がつかない。だから医療機関で定期的にチェックしたい。
本書のあとがきで吉形先生はこう仰っている。
30代の頃から定期的に骨密度を測っています。毎年の経過をみると、この1年の自分のライフスタイル(食生活、運動習慣など)が良かったのか悪かったのかの答え合わせ、バロメーターになります。
ここで私は「おっ?」となった。なんだかおもしろそう! そして「検査なしでの過信は禁物だと身にしみました」といったくだりでドキッとする。うん、更年期を「正体不明」とソワソワ心配する前に、検査を受けてみよう。本書のふろくで各検査の料金と検査施設が紹介されている。とくに料金の目安がわかっていると心理的ハードルが一気に下がる。検査も対策も治療も、うんと身近に感じられる頼もしい本だ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。