大人気「動く図鑑MOVE」シリーズの持ち運べるポケットサイズ図鑑、「MOVE mini」。その中の1冊『人体のふしぎ』は、小宇宙のような人体の世界をわかりやすく教えてくれます。「体を動かす」「食べる」といった機能ごとの体の器官を、見開きの美しいイラストや電子顕微鏡写真で紹介しながら全身をめぐります。人体という不思議な世界を探検しているような感覚を味わえる1冊です。
人体の世界へようこそ
第1章は「MOVE THE BODY 体を動かす」。巻頭の目次のほかに、章ごとの詳細な目次があるのが嬉しい。
この図鑑には、人気番組、NHKスペシャル「人体」からの画像が多数掲載されており、美しい写真と精緻なイラストが目を惹(ひ)きます。
体を動かすと言えば「骨」や「筋肉」。しかし、その骨を「つくる」「こわす」「ささえる」細胞がある……? こんな風に体の機能に興味をひかれた時、細胞や器官の名前を知らなくても、どのページを見ればいいのかすぐわかるのもこの図鑑の特色です。さっそく見ていきましょう。
体の各部位が見開きで紹介されます。この「骨格」のページでは、人間の体にある200個を超える骨のパーツについて知ることができます。左上にあるキャプションは、人体に詳しい「ムーブはかせ」によるもの。「子どものころ、骨は300個以上あるんだね!」と驚くムーブ少女のほか、細胞、血球といったキャラクターも登場します。さらに見開きページはすみずみまで余すところなく使われ、各ページ下段にもQ&Aが。
Q:いちばん長い骨はどこにあるの?
A:人体でもっとも長い骨は、ふとももにある大腿骨です。
ここでは大人も子どもも興味をそそられ、雑談のネタにもなりそうな「人体豆知識」を楽しく学べます。左ページに問いが、右ページに答えがあるので、子どもと一緒にクイズ形式で見ても楽しいかもしれませんね。
さて、骨を「ささえる」「こわす」細胞は何をしているのか? その答えはこちら。
体の中で骨が壊され、再生するのには理由がありました。体の動きに合わせて様々な力がかかる骨は、日々生まれ変わるのです。
おれやすい部分の骨を一度こわし、そして「骨芽細胞」が丈夫につくりなおしている。その「工事」のスピードは、骨細胞が出す物質がコントロールしているんだよ!
「堅い」「一度できたらそのまま」といったイメージの骨も、実は新陳代謝を繰り返して丈夫さを保っていた……。そんな様子が、子どもが見てもわかりやすく、大人が読んでも興味深く紹介されていました。医学用語や専門用語も、理解しやすく書かれており、人体についての「知りたい!」欲を、しっかり満たしてくれます。
人体って美しい
ダイナミックで美しいイラストに加えて、最新の顕微鏡写真がたっぷり掲載されているのもこの図鑑の魅力です。美しい顕微鏡写真は、小さくなって体の中を探検しているような気持ちにさせてくれます。
この電子顕微鏡写真は「腸内フローラ」と呼ばれる人間の腸内細菌です。人の腸内では1,000種類以上・100兆個もの細菌が種類ごとに集団を形成しています。善玉菌も悪玉菌もそれぞれに個性があり、どこか可愛らしい。腸内フローラがときにお花畑に例えられるのも納得です。
人体を作っている細胞は、こんな風に見えます。
模様のよう、あるいは植物のようでどれも個性豊かです。この個性は機能が生んだ形。例えば耳の有毛細胞は
これらの有毛細胞が、リンパの振動を電気信号に変換させ、音として脳に伝えます。
といった具合に、その器官の役割に特化した形をしているのがわかります。
この写真は、手の血管を標本にしたもの。
酸素や栄養を届けるため、人体の隅々まで張り巡らされている「血管」。酸素や栄養を届けてくれ、健康や美のカギを握ると言われていますが、血管そのものもまた、とても美しいと感じます。そして、この美しい血管には別の役割もあるのです。
また、MOVE mini『人体のふしぎ』は、放映時大変話題になったNHKスペシャル「人体」とコラボをしています。
NHKスペシャル「人体」チーフ・プロデューサーの浅井健博さんからのメッセージもあり、こう書かれています。
最新科学は、さまざまな臓器がメッセージを発信して、まるで会話を交わすように情報をやりとりし、わたしたちの命を支えてくれていることを明らかにしています。メッセージは細胞が発するミクロの物質。情報回線は総延長10万kmといわれる血管網。それはまるでインターネットのような世界です。
図鑑の全ページがスマホで見られる
イラストや写真の美しさ、解説の詳細さが魅力のこの図鑑。
「脳」のページを見てみましょう。心と体、つまり「人体」が「人間」であるための機能を一手に引き受ける臓器だけに、解説も超・詳細です。
本で見るのもいいけれど、気になる部分を拡大できたら……。と思いますよね。この図鑑は、Webアプリを使い、全ページをスマホやタブレットで読むことができるのです。先ほどの「脳」の解説も、スマホで拡大すればこの通りの見やすさ。
単ページでも表示できますが、本書の魅力はやはり見開き。イラストの美しさが際立つ、大画面のタブレットでも楽しみたいところです。
軽い気持ちで手に取ったこの図鑑ですが、時間を忘れて見入ってしまう美しさと面白さがありました。子どもにとってもわかりやすいけれど、それは「大人にとっては物足りない」意味ではありません。好奇心を刺激してくれる1冊です。ぜひ、手に取ってみてほしいと思います。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
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