お風呂ってヒマ(だった)
どろんこの犬が「お風呂」という単語をかたくなに無視する心情が私には少しわかる。大人になった今じゃ信じられない話だが幼い頃はお風呂が心の底からおっくうだった。
シャンプーの泡は恐ろしいし、のぼせそうだから湯船もあまり好きじゃない。そんなお風呂に入りたくない事情は数あれど、最大の理由は「ヒマだった」からだ。そう、ヒマなのだ。おもちゃで遊んでもヒマ。なのに毎日入らないといけない。おとなしく洗われ、しぶしぶ湯船につかり、やっと解放されるぞと思いきや謎に「10数えてから出ようね」などと言われる。ずるい! 4歳児の10秒の長さを大人はわかっているんだろうか。
『電車でおぼえる! 日本地図 おふろにはれるよ!』の大きな日本地図を浴室の壁にペタッと貼り、湯船でぬくぬくしながら見上げ、あの永遠に続くようなバスタイムを思い出した。こんな地図がお風呂場で私を待っていたなら、さぞ楽しかったろうに。なにせめちゃくちゃ大きいのだ。そのサイズたるや、たて84.1cm、よこ59.4cm。大人が腕組みして向き合っても大きい。そして電車がギッシリ。線路が日本全体を結んでいるさまもよくわかる。いい。見るところがいっぱいで、ぜんぜんヒマじゃない。
糊不要でキレイに貼れる
この大きな大きな日本地図の居場所は浴室だ。防水仕様の丈夫でなめらかな紙質であるため、水につけるだけでお風呂の壁にピタッと貼りつく。糊も画びょうもテープもいらない。
こんな感じで貼ることにした。
どーん。300mlの細長いシャンプーのボトルが小さく見える。小さな子どもの目線に合わせるなら洗い場の低い位置に貼るのもよさそうだ。
あっけないほどカンタンにくっついて、数日経っても剥がれる気配なし。なのに四隅を少しめくればスルスルとキレイに剥がせる。ということで貼り直しもラクにできた。
そして地図の表面はマットだ。これならお風呂の照明やお湯の反射を受けてもまぶしくないし、なにより触るとサラサラと心地良い。この日本地図は指でたどって遊んでもらうために作られている。
この電車はどこを走っているかな?
じゃあどんな風に指で触れて遊ぶかというと……、
私はこの線路を走っていますよ!と言わんばかりにプロットされた電車たちにワクワクする。人気寝台列車の「サンライズ瀬戸・出雲」は出雲にいますね。赤い丸は新幹線が停まる駅を示し、青い丸は特急が停まる主要な駅だ。線路のうねうねも楽しい。この地図は3歳以上を対象にしているが、駅名だけは漢字で表記されているのも鉄道好きとしてはグッとくるポイントだ。ちゃんと読み仮名もついているので親切。
新幹線たちもずらりと並ぶ。
うん、みんなかっこいい。2022年秋にデビュー予定の「かもめ」もいる! それぞれの電車の説明書きの背景色は日本地図の色と対応している。だから東京から博多までを走る「のぞみ」の背景色はとてもカラフル。
この説明書きがこれまた楽しいのだ。全員「どこから出発して、どこまで走るか」を自己紹介としている。するとお風呂場でこんなアクティビティが発生する。
たとえば東北の「三陸鉄道」を見てみよう。テレビドラマにも登場したトリコロールのかわいい電車です。
「いわてけんの 久慈えきから 盛えきまで リアスせんを はしるよ」とあります。ということで、まずは岩手県を探そう。背景の深いブルーも貴重なヒント。で、岩手県を見つけたら、お次は久慈駅。どこかなー?
みっけ! 盛駅も釜石駅の近くにありますね。本当にリアス式海岸を沿うように走っているからリアス線っていうんだなあ。駅だけじゃなく有名な山がさりげなく表示されているのも面白い。「E5系はやぶさ」もキレイだなあ。ああ目移りする。
こんな感じで毎日ちゃぷちゃぷ楽しく遊べば、やがて日本地図がすっぽり頭に入るはずだ。自分が暮らす土地の電車がどこに繋がっているかをたどるもよし、旅行を思い出しながら地図を見返すもよし。そして気になる電車の顔を選んで、どこで活躍しているかを探すのもよし(「くろしお」の顔、とっても愉快ですよ!)。楽しくてためになるお風呂のおともになるはずだ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。