「ビッグランを25年間撮り続けていて……」と写真家・岡野昭一さんから真っ赤に染まる川の写真を見せて頂いたのは、社内が閑散としていたコロナ禍の最中。4年に1回、200万匹超で大遡上をするカナダ・アダムス川のベニザケに魅せられて、毎度3カ月間、寒さに震えながら人里離れた川辺でひとりカメラを構えて過ごすという、その熱量に驚愕するばかりでした。
川の中は、メスが産卵のために掘り起こす砂利、巻き上がる卵、闘いで傷つくオス、産卵で力尽きた大量の死骸……と圧巻の光景が広がっているそうです。私は夥(おびただ)しいベニザケの死の姿に、壮絶な生と写真ならではの美を感じましたが、内容は子どもたちが地球の未来を考えられるように構成しています。ベニザケが赤く色を変え、生まれた川を遡上し、生涯に一度の産卵をし、新たな命が育つまでを、気温-15℃の中で、石にしがみついて捉え続けた写真集をお楽しみください。
──児童図書編集チーム 磯村花世
レビュアー
児童図書編集チーム