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2022.11.23

レビュー

世界で3000万人に愛されている大ベストセラー絵本「にじいろのさかな」のクリスマス

1992年にスイスで誕生し、日本では1995年に谷川俊太郎さんの訳で発売された「にじいろのさかな」。この「にじいろのさかな」シリーズは、世界で3,000万人以上の読者に愛され続けているロングセラー。
発売から30年経った今も新作が読めるというのは、凄いことだと改めて感じます。
だって、子供のころに読んでいた人が、親になっていることもあるわけですから!!

今回発売された『メリークリスマス、にじいろのさかな』は、主人公の「にじうお」が「メリークリスマス!」と呼びかけると、友達が集まって来て、みんなと一緒に海の仲間たちのところに「メリークリスマス」を言いに行くというもの。

年少版なので、全部ひらがなで文字は少なめですが、相変わらずキラキラで温かみのある色彩が美しい!!  そして、さりげないお話なのに、ほのぼのとしています。

このお話の中で私が面白いと思ったのは、「うつぼ」が出てくるところ。
「たこばあちゃん」から、「うつぼは ともだちが いないみたい……。」と聞かされた「にじうお」たちは、「うつぼおばさん」の所にも「メリークリスマス」を言いに行きます。ところが、「うつぼおばさん」は……。



なかなかの変わり者キャラで可笑しいのですが、それよりも「うつぼ」にスポットライトを当てたことが意外でした。
実際の「うつぼ」は見た目がグロテスクで、日中は岩場の穴や裂け目にひそんでいる生き物です。
おそらく水族館にいたとしても、私は素通りするでしょう。このお話にも出てくる「たつのおとしご」の方が、はるかに好きなので。
でも、この絵本のお陰で、「うつぼ」に対する見方が変わりました。

もうひとつ、「たこばあちゃん」の「ありがとう! わたしは ひとりで げんき。」というセリフも、短くて余計なことが書かれていませんが、心に残りました。
この言葉の裏には、私より「うつぼおばさん」のところに行ってあげて!!という優しさがあるからです。

最近はマンションですれ違う人に、「こんにちは」と挨拶をしても無視されることが多く、なんとも言えない重い気持ちになることがよくあります。
逆に、大晦日(おおみそか)に1人で墓参りに行った帰り、閉店間際のお店の人にかけられた「よいお年を」という一言に、どれだけ心が救われたかわかりません。

挨拶が持つ力と温かさは、まさにこの本に出てくる“キラキラ”のように、周りを明るくします。

私は、この絵本からそんなことを感じましたが、何を感じるかは人それぞれ。
色々なことを想像したり、感じたりできる余白がお話にあるところも、この絵本の魅力であり、長い間愛され続けている理由だと思いました。

そして「にじいろのさかな」と言えば、“ホログラム”と呼ばれるキラキラの特殊印刷をいち早く絵本の中に取り入れたパイオニア。
昼間の太陽光で見るキラキラもいいのですが、照明の下で見るキラキラは、角度によって銀、青、紫、緑、黄、オレンジ、金へと変わり、見ているだけで自然と笑顔になります。
きっと寝るときに子供と一緒に見たら、喜ぶことでしょう。
クリスマスにはちょっぴり早いかもしれませんが、私はこの『メリークリスマス、にじいろのさかな』を姪(めい)の子供に贈ろうと思います。

メリークリスマス、にじいろの さかな

作 : マーカス・フィスター
訳 : 谷川 俊太郎

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レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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