不惑を迎えたものの、いまだに投資的なものをした事がないのです。
投資ってなんだかよくわからない。だって怖いから。だったら銀行預金にして預けるか、あるいは自分に投資とばかりに資格を取ったり講座に通ったり。
なぜなら投資についての文献を読んでも、経済の新聞に目を通してもどうにも二の足を踏んでしまって始められなかったのです。
ですが、『100ポイントあったら「株」を買いなさい!』をきっかけに私、投資を始められました。そう、ポイントを使って。
やはり投資となるとまとまった金額で証券口座を作って、それでグラフの上下に一喜一憂して……という先入観があるんじゃないでしょうか。私はあります。
しかし本書はまずそんな先入観を壊し、実戦で投資のノウハウを身につけていくためにはどうしたらいいのか? はじめの一歩を踏み出すためには? そんな永遠のテーマをマンガで、そしてそれと対になる解説記事で迷える子羊を導いてくれます。「分からなくて怖い? だったらポイントで始めてみたらいいじゃない」と。
本書において、迷える我々の分身となる主人公がパートで頑張る主婦、佐藤さん。我々と同じように、投資って何だか怖いと思っています。そんな彼女がPTAの集まりで出会ったファイナンシャルプランナーの西園さんの指導を受け、恐る恐るそして少しずつ投資の世界に踏み出していくわけですが、冒頭はこんな感じで及び腰です。
とてもよくわかります。投資って聞くだけでハードルが高い気がしますよね。
でも、西園さんは優しくこう返します。
よく知らないと言うことが一番怖い。本書に一貫しているメッセージはこれに尽きると思います。そのため、自分事化しやすいようにどれか1つは誰もが知っているであろうポイントを例に挙げて導入していきます。
楽天ポイントに、dポイント、TポイントにLINEポイント。他にもPontaや永久不滅ポイントなど、保有量の違いはあれど、おそらく何らかの形でこれらのポイントを保持していると思います。絶対にポイントカードを作らない!といった余程の信念がない限り。ポイントカードを作らない人でもだいたい携帯キャリアのポイントがありますよね。
何だかよくわからないうちに貯まって、何だかよくわからない用途で消費していたり、いつの間にか失効していたりするポイント。それで投資を始めると言うこの気軽さ。この「気負い」のなさは投資を始めるためのチュートリアルとして最適な題材なのではないでしょうか。
どうせ失うものだったら、投資に回しましょう。
株式投資のシミュレーションでうまく行っても、実戦で勝てるとは限らないとよく耳にします。その理由は精神的な余裕がなくなるからだと。
でも、ポイントならば仮に減ったりなくなったりしてもどうせなくなるもんだし……と開き直りができるから。なくなったら残念だけど確かにダメージは現金を失うのに比べればそこまで大きくないですね。悔しいけど。
また西園さんのレクチャーの過程で、今日の個人投資では避けて通れないNISAやiDecoにも触れています。やらなければ、と思って事業者のサイトを開いてはよくわからなくてそっとタブを閉じていたこれらの制度。これもわかりやすく西園さんが解説してくれるので、理解を深めるきっかけとなってくれるでしょう。
今時いい歳してこんなことも知らないのかよ、と言われそうな気がして知ったかぶりしていたこれらの制度も、佐藤さんが代わりに色々聞いてくれるので安心です。
佐藤さんは楽天証券で始めていましたが、私はdポイントのSMBC日興証券で始めました。必要な手続きは基本的には同一なので迷うこともありませんでしたので、お持ちのポイントで悩むことはほとんどないと思います。
本書を何度か読み返して実際に口座を作ってみて感じたのは、あくまでポイント投資はきっかけで、その先の投資の楽しみや喜びを知らしめたい、そういう筆者の想いではないかと思いました。
まずはポイントで投資信託をするところから始め、そしてステップアップで株式投資に進める。その時必要でない情報はあとまわしにして、必要になった時に教えてくれるのです。
そしてローソク足の見方や、トレンドラインの見方など、銘柄を選ぶために必要な考え方まで、投資の世界に踏み込むために必要な基礎の基礎をいいタイミングで的確に教えてくれるので、何となく雰囲気でわかった気になっていたものが理解できるようになるのです。
どうぶつの森のカブですら失敗する自分にできるわけない、なんて思っていましたが、昨今の社会情勢を見るとそう言うわけにもいかない……。
そんな私みたいな人は落ち着いてお茶でも飲みながら本書を読んでみましょう。
「投資」の世界に一歩足を踏み入れるきっかけをもらえるはずです。
レビュアー
静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。