読み終えてまっさきに思い出したのは、かつての自分だった。入社時は超氷河期の真っただ中で、「希望の職に就けただけでも御の字、給料なんて二の次!」程度にしか思っていなかった。もちろん世間では「若いうちから人生設計を!」という言葉が飛び交っていたし、働くにつれ少しずつ気にするようにはなったものの、実際の行動に出るまでには長い時間がかかってしまった。もし私の元に、もっと早くこの本があったなら──。
本書では現状の分析に始まり、貯蓄のための現実的な手段やライフステージを順次紹介することで、今後の指針や目標を解説していく。章を重ねるごとに、自分が手にしているお金とその行く先が見えてくる。
ちなみに一般的なビジネス書や資格書よりも、本のサイズは一回り小さめに作られている。おかげで手元に置きやすく、持ち運びもしやすい。内容はイラストやマンガ入りで説明されているため、記憶にも残りやすい。何より、「今までの使い方」や「貯金のなさ」「お金に関する知識の少なさ」を否定することなく、「現状を分析した結果を基に、未来のパターンを提示する」という著者の姿勢が、「できることからやってみよう!」という勇気を与えてくれる。
パート1では、社会人として基本的な知識である「給料」と「手取り」の違い、「給与明細」や「源泉徴収票」の意味と読み方など、「大人になると周りの人は当然のように知っているけれど、いつの間に、どこで知ったの?」的な知識が、丁寧に書かれている。その読み解き方も、年齢や勤務先、家族の有無などさまざまなパターンで提示されていてわかりやすい。
とはいえ、「こんな簡単なことから?」と、呆れる方もいらっしゃるかもしれない。でも当たり前に思われていることほど、他人には聞きづらく確かめにくいもの。そして知らなければ損をするのも事実なのだ。だからこそ気が付いた時に、基礎から知識を得ていくことが重要となってくる。すでにある程度の知識を持っている方は、本書を「復習ブック」として活用することもできるだろう。
続くパート2では、自分の「お金消費タイプ」を知るためのチェックリストが用意されている。チェックの数でお金の使い方を把握したら、次は「無理せず貯める」ための具体的な金額と方法を確認していく。
同様にこの後のパートでも、日常の出費や年齢ごとの収支を具体的に示すことで、女性の人生において「お金が必要とされる場面」が挙げられていく。「貯める」こと、それ自体を目標とするのではなく、「いつ」「なんのために」「どのくらい」「どうやって」を、これでもか!と説明されるから、かつての自分にますます読ませたくなってしまった。
また、あとがきの言葉では、初心者の方はさらに励まされるに違いない。なぜなら本書が生まれた理由は、著者自身の「お金オンチ」だった過去にあるというのだ。
そんなこともあり、お金について「知りたい」という気持ちが高まり、FP(ファイナンシャルプランナー)になるきっかけになりました。FPになってからは、現金は月に一度しか下ろさない、先取り貯蓄をして残ったお金で暮らすといった、ちょっとした習慣の積み重ねで、お金についてのストレスをずいぶん減らすことができました。「知って」、「実行する」だけで、貯め体質になれるのですよ。それをお伝えしたくて、本書を書きました。
「お金」について知ること、そして使い方を考えることは、「人生の過ごし方」にも通じてくる。無意識でも考えなしでも、時間はそれなりに過ぎていく。でも貯蓄のあるなしで、見える景色やできることが違ってくることに気が付けば、「貯める」という行為が自分の未来への投資であることも実感できるようになるだろう。
この本を手に取ったことが、きっとこれ以上ないきっかけのはず! 「自分の未来」と向き合うために、隅から隅まで読み通し、次の一歩を踏み出してみよう。
レビュアー
元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。