お金という名の“濃霧”を楽しく晴らせる
30歳をこえた頃から不思議と「で、どうなの?」な話に出くわすようになった。婚活やってる? 卵子凍結保存って興味ない? ……さして仲がいいわけでもない女からそんなジャブが来ても真剣に答えるわけがないのだけど、そういう人ですら踏み抜こうとしない奇跡の地雷がある。
「お金」の話だ。
卵子を保存するのにも、ふらっとNYへ行くのにも、とにかくお金は必要なのに。私、お金使うのめっちゃ好きだし、お金増やしたいのに! こっちの話の方がよっぽど聞きたいのに。
考えるのが苦手だから? なぜ苦手? 不安だから? 濃霧だ。どこからどう歩き出せば……引き返すこともできず棒立ち。
本書『「不安なのにな~んにもしてない」女子のお金入門』は、そんな濃霧を晴らす第一歩としておすすめできる。FP(ファイナンシャルプランナー)の著者が、自分で書いたイラスト付きで、わかりやすく、優しい語り口で、ポジティブに(ここ大事!)解説をする本です。
いつの間にかお金と仲良く!
本書で紹介されている主な「お金の話(と、その特徴)」は以下の3つ。
1:ふるさと納税 (スーパーマリオのステージ1くらいカンタン)
2:iDeCo (こわくない!)
3:NISA (投資初心者さんはとにかく始めてください!)
まず、なぜこの3つを取り上げたのかの理由がめちゃ良い。
私が、建前ナシの本音で「イイ!」と思っている方法だから。お客さまにも友達にも家族にも「この方法を知っていれば、絶対トクするから!」と胸を張って言えます。
信頼できる。本書は最初から最後まで言葉があかるくて優しい。気をつけるべきことも欠かさず書かれているので、はてなマークと不安がスルスルとほどけていく。
さて、本書で紹介される「お金」の話のトップバッターは「ふるさと納税」。実践編がめちゃわかりやすいだけじゃなく、私たちがふるさと納税のことを大好きになるストーリーが丁寧に語られている。ここがすごい。
ユルくてかわいいイラストで仕組みを解説したのち、次は「ふるさと納税の何が私たちにとって魅力なの?」という話が続く。勉強いらずでカンタンにできること、「ごほうび」が手に入ること……などなど。でも、私が一番本書らしいなと思うのは「自信をもった女性に近づく」という視点だ。
サバイバルな現代を生き抜くのに武器になるのが「お金の知識」だと私は確信しています。(中略)ふるさと納税をきっかけにお金の知識が少しでも身につけば、自信をもった女性に近づけること間違いなしです。
な~んにも考えたことがなかった人が、お金や税金を「自分のこと」として考える「最初の一歩」に、「ふるさと納税」はオススメですよ、と著者は語りかけるのだ。
一般的に、お金の世界でトクしようとしたら、「時間」が必要になります。ですが、ふるさと納税は“今、結果がわかって”、“今、楽しめる!”というのが最大の魅力です。(中略)短い期間で明朗会計。わかりやすいほうが、誰だって嬉しいです。
わかる。どんどん素敵に思えてきた。そして極め付きがこちら。
お金が増えるわけでも、利子がついてくるわけでもありません。ですが、支払ったお金が戻ってきているというのがポイントです。それを大切に貯めておくと必ず将来につながります。
これだー! 戻ってきたお金、貯めてない! 貯めます! 仕組みを優しく解説するサイトや本は数多いが、ここを優しくビシッと説いてくれる人はあまりいない。ここまで読むと「絶対、ふるさと納税やる(そして貯める)」という心構えが完璧になる。この状態で読む「実践編」の染み渡ることといったらない。
iDeCoでさらに強くなって、最後はNISA
「ふるさと納税」でギアが完全に入ったところで次のステップ「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「NISA(少額投資非課税制度)」です。
どちらも、制度の仕組みと同時に“節税効果がある”ことを丁寧に教えてくれる。
iDeCoは、税金の優遇を受けながら、年金の準備ができる一石二鳥の制度です。
一般的に投資で利益が出ると、利益に対して約20%の税金がかかります。でも、NISAを利用すれば、利益に対してかかる税金は、なんとゼロ。
最初の「ふるさと納税」を読むことで税金を見る目が変わっているので、節税効果=税制優遇が、いかに私たちにとって素敵なことなのかがよくわかる。
しかも、「こわそう」な部分の解説がめちゃ良いんですよ。わかりやすい。
私は元本変動型だな。
スムージーの中身を吟味する心で投資信託もいける、と。
「銀行とネット証券、どっちが好き?」で始められるなら、気分的にだいぶ取っつきやすい。それに、「投資で手に入るもの」は「お金」だけじゃないのだ。
知識や考える力は、最後には自分の資産となります。投資による資産形成は、お金と自分、ダブルの成長を手に入れることができます。
「考える力」、ほしい! どんなライフステージにいても、どんな考え方で生きても、お金の知識は自分の武器になって、きっと役に立つはずだ。
さて、本書で紹介されている「ふるさと納税」、「iDeCo」、「NISA」のうち、どれから始めるのがいいの?について。とりあえず自分がわかること、なんだか楽しそうだなと思うこと、人生の目的別、どこから始めても大丈夫ですよと著者は言う。大丈夫なら、楽しそうだし、やってみようかな。食わず嫌いはもったいない。みんな「お金」の話しようよ!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。