2019年6月に金融庁が公表した報告書の「老後30年間で約2000万円が不足する」という話に、愕然とした方は多かったと思います。
かく言う私も慌てて老後資金を計算し、なんで今まで誰も老後のお金について教えてくれなかったのよー! と嘆きつつ、かなり落ち込んだものです。
この本に出てくるアラサー女子2人も同じ。65歳までに2000万円を貯めるにはどうしたらいいのか……。
彼女たちが出した答えは、ルームシェアでした。
「娯楽への散財は極力絞らず、どうにか他を絞って老後資金を作り出そう!」というの!!
登場するのは、学生時代から10年以上の付き合いで、誕生日会は赤提灯の居酒屋という庶民派の2人。
「ゼニざらちゃん」は、年収約320万円、フリーランスのwebデザイナー。アニメ、漫画、ゲーム、特撮などオタク趣味への散財が激しく、貯蓄なし。
「かねラビちゃん」は、年収約350万円の会社員。海外イケメンアイドルの追っかけで、年に何度も海外遠征をしています。
独身の女友達が集まると、「年取ったら皆で一緒に住もうよ~」なんて話が出るものですが、ツアー旅行ですら無理な私は、ルームシェアに興味津々。2人の生活を覗いてみた~い、という衝動に駆られます。
まずは物件探し。一緒に内覧に行き、相談できる人がいるというのは、正直羨ましい!
私も新築マンションをわずか1ヵ月で引っ越した経験があり、生涯引越し回数10回の賃貸派なので、この物件探しのくだりは、確かにそうだなぁと思いました。
ちなみに「家賃は手取りの1/3」が目安というのは、給料が右肩上がりで、スマホ代などの出費が要らなかった頃の話で、今は手取りの「2割から2.5割くらい」というのは、説得力があります。
時代は変わったのですよね。
この本は、2人の日常生活の話とともに、「ふるさと納税」「格安スマホ」「保険」「年金」「金融投資」など、お金に関することもデータを使って優しく教えてくれます。
私が最も気になったのは保険に関すること。出費や節約は本人の意思でできることですが、突然の病気はそうはいきませんからね。
特に心配なのは入院費用ですが、それには「高額療養費制度」というのがあるそうです。
例えば、70歳未満年収約370万円以下の人の自己負担限度額は、57,600円で済むというのです。
こういう制度は申請しないと戻らないので、知っておくことはとても重要だと思います。
生命保険もそうです。私が若い頃に入らされた保険は、親の知人に頼まれたもので、初任給の1割強という高額の掛け捨てでした。つまり、外交員の収益が高いものに入らされたのです。
そのため貯蓄型に変えたところ、バブル崩壊後、保険会社から新商品を勧める電話がしつこくかかってきました。貯蓄型保険は会社の利益にならないので、解約させようとしていたのです。
もし私に保険の知識がなかったら、相手の勧める商品に切り替えていたことでしょう。社会情勢が不安定なときほど、心もぐらつくので。
「ゼニざらちゃん」も体調を崩し、再検査が必要になったことで保険の見直しに気づいたわけですが、病気になってからでは遅いですからね。
自分に合った保障の見直しは、大事だと思いました。
実は私、保険に限らず何でも徹底的に調べあげる質で、それなりにいい年なので、お金に関する様々な知識は持っていますが、それを知るためには莫大な時間と労力が必要でした。
だからこそ、もっと早い段階で知識があれば……と思ってしまいます。
知らなくて損をすることは、世の中に一杯あるのです。
この本は、ルームシェアという話と一緒に、お金に関する勉強もできるので、楽しく読み進めることができ、頭にも入りやすいと思います。
まずはこの本を手始めに、知ることから初めてみては如何でしょうか?
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp