ビギナーになる前の、最初の一歩
今でこそ自分で作る自分のためだけの料理が好きだけど、そうなるまでにいくつかハードルがあったなと思う。まず最初の一歩がよくわからない。無理矢理始めて、たくさん失敗した。
そりゃ、義務教育の授業のひとつに調理実習ってありましたけど、あれは自分ひとりの食事を毎日の生活のなかで作るトレーニングではなかったし。
で、いざ何か作ろうかな~とレシピを探すと、4人前だったりするんですよね。食べるのも作るのも私ひとりなのに。しかも量が多いわりに野菜が絶妙に使いきれなくて、「なんだか自炊って高くつくな」と思ったり。
『初めてのひとりキッチン』は「自炊ってかんたんでおいしいよ!」と教えてくれるガイドブックだ。とても頼もしい。
この本はいままでのビギナー向けの料理本よりも、さらに一歩手前の段階を想定しています。
「包丁が使えない……」「火の扱いに自信がない」と料理に踏み出せなかった人も、まずは食材を手にとって、自分で食べるものを作ってみましょう。
包丁や火がなくたって、きっちり計らなくたって、手際良くパパッと料理できなくたって、ひとり分の温かくておいしい料理が毎日作れるようになる。
まな板や包丁がなくたってOK
まずは楽しそうなこちらを作ってみた。「なんちゃってガリ塩ポーク炒め」。
もやし、にら、豚こま、にんにくの王道な組み合わせだ。
まな板、包丁、コンロを一切使わずに作れる! お肉のトレイで下味をつけるので、ボウルすらいらない。料理本で「お肉のトレイをそのまま料理に使っていいですよ」と明記してくれると、すごく気が楽になる……。そして「トレイに汁があれば捨てて」、「キッチンばさみで切って」、「全体を混ぜながら水洗い」などの短いアドバイスがとても親切だ。
下ごしらえ完了。キッチンばさみでニラを切るのは初めてだった。ザクザクいきました。
こんなに野菜をもりもり盛って大丈夫? と思っていたのに、レンジでチンすると加熱されてかさが減り、お皿にキチンと収まって完成。
下味しっかりでおいしい。にらともやしの食感もいい。野菜をたくさん食べたいときにオススメ! 暑い季節に火を使わず温かい料理が食べられるのもうれしい。
「クイックみそ汁」も体にやさしくて、かんたんで、おいしかった。
今まで、朝食用のみそ汁は小さな鍋を使って作ってきたけれど、そうか、お湯とマグカップがあればできちゃうんだ!
具は焼き海苔と焼き麩にしました。
みそを測った小さじでそのままクルクル溶かして完成。温かいものを口に入れて一日を始めるのって幸せだ。そして夜食にもいい。削り節をたっぷり食べると空腹が落ち着く。
インスタントラーメンだって栄養たっぷり
この本で紹介される料理方法は、のっけるだけから始まり、次にチンするだけ、やがて鍋を使って、フライパンを使って……と、少しずつステップアップする。
「鍋に材料を入れるだけレシピ」の章ではインスタントラーメンのページもとてもよかった。
カラフルできれい。そしてラーメンの量に注目。これ、インスタントの塩ラーメンを半分に切って作るんです。半分に切っちゃったら、もう半分は? 隣もラーメンのレシピなので「次はこっちを作ってみよう」となる。トントン拍子だ。朝と昼でそれぞれ作ってみました。ラーメンを包丁でバキッと半分に割るのが楽しかった。
さっぱりとおいしい。しかもラーメンが半量! サラダチキンでたんぱく質も摂れてヘルシー。
お次はこちら。
しつこいけれど、ラーメンが半量! なのに満ち足りた。豆板醤の辛味とトマトのうまみと半熟の卵が効いてる。(ネギは別の料理で使いきれなかった小口切りのネギを活用しました。レシピではもうすこし長い切り方です)
インスタントラーメンだってすこしの工夫でこんなにバリエーション豊かでおいしい食事になる。鍋がなくてもみそ汁はできる。包丁がなくても野菜は切れる。いろんな道具や工程を削ぎ落としても、料理はおいしく作れるんだとわかると、キッチンが身近な空間になる。料理って楽しくて元気になるな思わせてくれる心強い本だ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。