家でもお魚が食べたい(なるべくかんたんに)
スーパーで「あー、ごはんたべて元気出そう」と思いながら食材を探すと、ついついお肉を選んでしまう。「やっぱ肉でしょ!」みたいな。私の場合、あれは栄養価の高さ低さというより、料理し慣れているかどうかで選んでいる気がする。もちろんお肉には栄養がある。でも、お魚にだって栄養はたくさんある。
『藤井恵さんのむずかしくないお魚レシピ』の冒頭で藤井さんはこう語りかける。
魚には人の体では作ることができない不飽和脂肪酸が豊富です。DHAやEPAなどもそのひとつ。日常的に摂ることで、脳機能を維持したり、血液をサラサラにしたり、免疫力を上げるなどの効果が期待されています。
うん。やっぱりお魚には独自のいい栄養がたくさんある。なにがなんでも風邪をひきたくない昨今にみんなが求める栄養素がたっぷり。しかもおいしい。
魚は食べごたえがあるのに食後は重くならず軽やか。火の通りが早いので、調理時間が短くて済むという利点もあります。
ほんとだ! お腹いっぱい食べても苦しくならないし、数分で火が通る。ひょっとして平日のお夕飯で光り輝く食材なのかも。
この本には藤井さんが考案したお魚レシピが51品ならんでいる。お刺身か塩焼きか煮付けに落ち着きがちな魚たちが、少しの工夫でガラッと変わるのだ。
塩さばって今までずっと塩さば単体で焼いて食べちゃってたよ(おいしいけど)! ああ、にらってβカロテンが豊富なのか。こういう栄養の豆知識を読むのがたのしい。元気が出る。そしてそれぞれのレシピには「おいしく仕上げるアドバイス」がシンプルに書き添えられている。お魚初心者にもやさしい。
切り身を使ったレシピもたくさんあるので、お肉と似た感覚で料理できた。お魚ってかんたんにおいしくなるんですね。
洗い物が少ない!
まずは表紙にも登場する「ぶりのソテー オイスターソース」と、副菜の「きゅうりとトマトときくらげのサラダ」を作ってみることに。ちょうど、立派なぶりの切り身が売っていたんです。
「おいしく仕上げるアドバイス」に注目。
ほうれんそうはやわらかくゆでることで、身がやわらかなぶりとのなじみがよく、また食べやすくもなります。
ほうれんそうのゆで加減の理由、ものすごくおいしそうでしょ? 副菜の食感も作る前から想像できる。ぜったいおいしい。
他のレシピでも同様に「どうしてこの副菜やつけあわせが主役を引き立てるのか」をたびたび教えてくれる。それは食感であったり、栄養であったり、香りだったり。読むとますます「これはおいしそう」と思う。
できあがったのがこちら。
白ごはんはマスト! ほんのり酸味のきいたネギソースと香ばしいぶりが合わさっておいしい。カリッと焼けたぶりと、やわらかいほうれんそうっていい組み合わせだな。初めて一緒に食べた。きくらげときゅうりの食感も心地いい。
このレシピで感動したことがもう一つある。ぶりの下にたっぷり敷きつめたつけあわせのほうれん草は、フライパンで茹でるのだ。そのあと同じフライパンをサッと拭いてぶりを焼く。つまり大きな洗い物がひとつ減る。らくちん……!
藤井さんはお魚で作るおいしい「つくりおき」も提案してくれる。
さば缶フレークはその名の通りさばの水煮缶を使う。さばの栄養が詰まった汁も一緒にいただける。こちらはカレー粉を少しだけ入れます。さばカレーってありますよね。
いい匂いすぎて「もう完成だ!」と思ったけれど、もう少しチリチリになるまで炒りつけてもよかったかも。でもおいしい。ほんのりカレーのいい香りがする。
さば缶フレークはお弁当でも大活躍。カレー粉の色移りが少し心配だったので白木のお弁当箱につめる場合は紙カップに入れました。朝起きて5分で詰めたのに満足度の高いお弁当だった。定番入り。
いざ作ってみると本当にかんたんにお魚料理と副菜が食卓にならんだ。そんなお皿たちの前で「ちゃんと栄養バランスを考えたおいしいごはんを作った」って自分をほめることは、心の栄養になるんですよね。レシピに書き添えられたひとつひとつの栄養やおいしさを確かめながら作ってほしい。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。