朝鮮学校に通う少女ジニの「革命」を描いた衝撃のデビュー作『ジニのパズル』でトリプル受賞を果たした崔実。4年ぶり待望の第2作『pray human』が9月28日(月)に発売されました。
むちゃくちゃエモかった。
女性、子供、つまりマイノリティの痛みに、自分の中にもいる弱者が共振する。
切実な思いが詰まった小説。
━━いとうせいこうさん
「人間」をやることは、こんなにも苦しい。
私たちはもっと、自分自身を褒め、抱きしめてやるべきだ。
━━西加奈子さん
ささやかだけど、深いやさしさに、しっかり抱きしめられた。
━━鈴木杏さん
17歳のとき、精神病棟で出会った君へ。
息が詰まるほど大切な人との出会いと別れ、言葉にできなかった秘密――。
圧倒的熱量で描く、少女たちの闘いと祈りの物語。
pray human(プレイ・ヒューマン)
装丁 佐藤亜沙美(サトウサンカイ)
装画 有村佳奈
著者プロフィール
写真 大坪尚人
崔実 (チェ・シル)
1985年生まれ。2016年、『ジニのパズル』で第59回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。同作は第155回芥川賞候補となり、第33回織田作之助賞、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2020年、4年ぶりの第2作となる『pray human』が第33回三島由紀夫賞候補にノミネートされる。
『pray human』に、全国の書店員さんから熱いコメントをいただいています!
崔実さんの待ちに待った新刊は、衝撃のデビュー作『ジニのパズル』から随分と待たされた気がするが、十二分にその時間に報いてくれる作品。彼女は、闘う小説家である。この世界の綻びや矛盾、強者の体制や理論を、多くの者達が知らなかったり気付かぬふりをしている澱(おり)を掬(すく)って見せて救ってくれるのだ。そう、どんなに重いテーマを扱っても彼女の作品は、読者を幸福に導いてくれる。それは天才故の天啓なのか、若くして老成すら感じさせるキャリアの賜物なのかは分からない。艱難辛苦を乗り越えて産み出された物語である事は間違いないが、読後に、早く次のお話をとせがむ幼児の様な気分にさせられるのは、私だけでは無い筈。果てしなく青い夏空に爽やかな風が走り抜けた。
――大垣書店 豊中緑丘店 井上哲也さん
夢中で読んだ。一気に読み終えた。17歳の少女が出逢った人たちとの日々も、傷をえぐるような思いだったりするのに、何故だかとても美しい。触れたくて、でも触れたら壊れてしまいそうなきらめき。読後、静かに涙が頬を伝う。祈りのように静かに伝う涙に答えを見付けた気がした。
――明林堂書店 大分本店 多田由美子さん
絶望という傷が深ければ深いほど希望という修復を願う気持ちが強くなっていく……。たくさんの言葉が、感情が“祈り”のように息吹いていました。読み終わった後、静寂な感動が心に広がりました。
――紀伊國屋書店 福岡本店 宗岡敦子さん
精神病院の入院患者、元患者の話。外の世界から見るとヘビィな状況だと思うが、主人公や彼女を取り巻く面々がみんなエネルギッシュで暗さを感じなかった。弱々しい点滴姿でも生き生きした会話のキャッチボール。小さな事柄や情景、見落としがちな道端のモノにまで愛を感じる。何か、キラキラした……宝石箱の中身をぶちまけたような印象。これは紛れもなく青春小説なのだ。彼女たちの力強さに感動した。
――ブックファースト エビスタ西宮店 文芸書担当者
小説を書かなければ生きていけない。生きるとは書くこと。1ミリの噓もない切実で狂おしく美しく、書かずにはいられなかった文章は私を圧倒し、あり得ない感動でうち震えさせた。時系列が錯綜している。それは魂から押し寄せる、言わなければならなかったことがその時にそのまま、生まれたままで広がっていったから。人が沈黙している、最も耳を傾けるべきものを吐き出せなかった、救えなかった後悔。ラスト、彼女の沈黙が破られた時、私は生きていく美しく明るい希望をみた。
――ジュンク堂書店 滋賀草津店 山中真理さん
美しくピュアな目線で描かれた現代の日本を舞台にした「ライ麦畑」なのだろう、と感じました。この世に正常も異常もなくて、ただ美しい何かと、ドス黒い何かがある。自分はできるだけ美しくありたいと思った。由香とのエピソードがとても好きで、初めて由香と会った時、原宿でゴルフをした2人がとても美しくて、かわいかった。
――ブックスタジオ 渋谷宙希さん
体中の傷口から血を流しているように痛々しくせつなくて、思いっきり大声で笑い声をあげたくなるような愛情を感じさせてくれる物語です。傷ついた彼女たちは、私たちよりも他人の気持ちに敏感で、やさしいと思った。
――ジュンク堂書店 神戸三宮店 三瓶ひとみさん
精神病院に入院していた「わたし」が「君」宛に綴る繊細な物語。君にも話してこなかったわたしの秘密とは……。由香とのボディペイントアートのシーンが印象的で、鮮やかな色彩が浮かびあがり、少女たちの儚い輝きが目の前で煌めくようでした。傷だらけで挫けそうになりながら生きる「わたし」は、読んでいる私自身かもしれない。
――ジュンク堂書店 名古屋栄店 西田有里さん
行間からひりひりしてくる。人生は一度限りで、時間は巻き戻せないけれど、回り道や、脇道や、新しい道もある。pray humanという言葉の意味を噛みしめながら読んだ。奥が深い。人生はまだこれからだ。
――うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
それぞれの登場人物はもしかしたら大河の中の棒杭のような存在なのかもしれない。だけどそれぞれ孤高で孤独だけど、崔さん自身が迷いを持ちながらも降りる瞬間、小説として確かな息吹が宿っていく。信じる、救われる、そして生きていく。彼女たちの言葉からその想いが自分の心のなかにもしっかりと残っていく物語だった。
――大盛堂書店 山本亮さん
人はみな脆い心のバランスで生きている。いつ壊れてもおかしくないギリギリの状態で、それでも、必死にこの世界にすがりつこうとしてる。これは彼女にしか書けない作品だと思います。
――岩瀬書店 富久山店 吉田彩乃さん
狂気と正気の境目がない世界。自分の内側と外側が溶け合い輪郭があやふやな世界。私とあなたの存在がかすかにズレながら重なる世界。そして、生と死がほとんど同時に存在する世界。想像できるか、その世界を、と小説が問うて来る。精神病棟は世界の縮図であり、拡大図でもある。圧倒的な色と音と声と像に押しつぶされそうになりながら走り抜ける、言葉の渦の中を。この小説は頭で考えることを拒否する。そのまま受け取れ、そう聞こえる。
――精文館書店 中島新町店 久田かおりさん
『ジニのパズル』より、だいぶ間があいたので、2作目が読めて本当に嬉しく思っています。起こった出来事は断片的で、判然としないながら、切実さと瑞々しさ、痛ましさに胸をつかれました。特に石鹸を食べるシーンは忘れられません。人間って何だろうと、『pray human』を読んでから、ずっと思っています。
――梅田蔦屋書店 永山裕美さん
しんどい。なんてしんどいんだと最初読んでいくが、人に傷つけられ、人に癒される。そして自分を愛していく希望の本でした。
――ジュンク堂書店 西宮店 水口真佐美さん
六章の最後の一文を目にしたとき、私は“風と共に去りぬ”のスカーレットの言葉、“そうだ、私にはタラがある、タラへ帰ろう”を思い出したのです! 少しニュアンスが違うかもしれませんが、どんなに生きることが苦しくても、つらくても、心が引き裂かれんばかりに痛くても、一瞬の輝く光のために、私たちは生きる。“神様、私は本当に生きていてよいのでしょうか”何度も何度も心の中で問い質したり、泣きながら叫んだりした。絶望の淵の中で、皆、生きていかねばならない。それでも、一筋の光を待ち望んでしまう、その光こそが、この小説なのです!
――芳林堂書店 高田馬場店 江連聡美さん
デビュー作『ジニのパズル』は芥川賞候補で傑作だ。私の中では受賞作より最高! ようやく2作目が刊行される。やはり期待通りだ。しかしこの手の小説が少ない昨今、衝撃が半端ない。出足から圧倒的にパンチを食らう。魂をえぐりとられるかのごとく。この才能はただもんではない。ぜひ『ジニのパズル』とともに読んでほしい。人間の魂の底からの叫びを味わってほしい。
――明林堂書店別府本店 冨田昭三さん
人は誰しも、他人には言えない辛い記憶を持っている。忘れたくても忘れられないものに囚われながら、死にたくても生きていく。藝術を志す者は、如何にしても自分の心のどこかを少しずつ削りながら創作をする。主人公は、誰かや自分自身の祈りを、血と涙の結晶を言葉で表現している。
――文教堂書店 溝ノ口本店 山根麻耶さん
これは真っ当な人間の魂の叫びだ。苦しく痛いほど心に喰い込んでくる。正と狂の境界線、そんなものはないのだと思う。
――文真堂書店ビバモール本庄店 山本智子さん
感情や思いが流れこんでくるような文章に、ただ圧倒されました。辛い目にあう外の世界がまっとうな世界なのか? 淡々とした主人公の語りの中に、世間を生きている人間が壊れていることへの怒りを感じました。過去のトラウマを許し、苦しみを抱えていた魂が救われた、そんなラストでした。
――ジュンク堂書店松山店 石岡穂奈美さん
竹下通りの人混みを躱しながら走り抜けるように一気に読んだ。途中、どうしようもなく泣きたくなったり、彼女らと一緒に馬鹿笑いをしながらたどり着いた先には、寂しさと空虚さと痛みと、それら全てを抱きしめたくなるような希望があった。
――旭屋書店新越谷店 猪俣宏美さん
この作品は4日かけて読んだ。1日目63ページまで。よく分からない。2日目126ページまで。家族の話。3日目189ページまで。由香の話。そして4日目、第5章から。そうだ、今まで彼女はずっと叫んでいたんだ。心の底から求めていたのだ。なんでここまで届かなかったんだろう。心の中の叫びに気付くには、まず聞こうとする意識がないといけない。届かなかったんじゃない。みんな受け取らなかったんだ。この作品が叫びとなり、何処かの誰かを突き動かし、そこから解放、自由が生まれる予感がします。
――紀伊國屋書店 仙台店 齊藤一弥さん
さらけだす、叫ぶことによって見えてくるものもある。社会をうまくかわせない、けれど本当の根っこのところでは、純粋に生きている、そんな人達の魂のつぶやきのような一作でした。
――有隣堂 藤沢店 佐伯敦子さん
純粋であればあるほど、命を大切にすればするほど、この世界で生きるのは苦痛なのかもしれない、と思いました。「自分の話を聞いてくれた人のことは、絶対に忘れない」という安城さんの言葉が重く響きました。
――ブックセンターよむよむ 坂戸入西店 阿部千鶴子さん
幼い頃の苦しみ、傷、やるせなさ…自分を再構築するための大切な儀式のように語られるそれらは、剥き出しにされた魂にじかに触れているようで、焼けつくようなヒリヒリとした痛みまでが伝わってきました。今まさに、苦しみに沈黙してしまっているすべての人達にも、このお話のような希望の光が届くようにと願わずにはいられません。
――鹿島ブックセンター 八巻明日香さん