気が付けば今年もあとわずか。平成最後のお正月、年賀状にも気合を入れて……とはりきっている方も、たぶん今年も紅白を見ながら書くことになりそう(!)という方も必読! 大人は知っておきたい、意外と知らない年賀状のマナーを、手紙に関する書籍を多数執筆している中川越さんの著書『実例 大人の基本 手紙書き方大全』よりご紹介します。
これってOK? NG? 年賀状の基本マナー
「賀正」がシンプルで誰にでも使えそう?
目上や上位者への改まった年賀状では、「謹賀新年」「恭賀新年」などの賀詞を選ぶのがていねいです。「賀正」「迎春」「頌春(しょうしゅん)」は粗略な感じがします。
「年末に家族みんなでノロウイルスに……」って書いてOK?
原則として暗い話題や不吉な内容は、できるだけ避けます。喜び、健康、無事、幸福、希望などを伝え合うことが大切です。病気、事故、けが、死、不幸などの暗い話題を持ち出すのは不粋であり、失礼でもあります。喪中で出せなかった年賀状の代わりに寒中見舞いなどを出すときもありますが、やはりできるだけ明るい雰囲気のあいさつを心がけます。
引っ越しのお知らせを兼ねてもいい?
年賀状や季節のあいさつと、各種通知を兼ねることがしばしばあります。結婚、転勤、転居など、それぞれの出来事が起こったときに、ことさらに伝える必要のない相手には、季節のあいさつのタイミングまで待って、それぞれの通知を行うのが合理的で、礼儀にもかなっています。
印刷した年賀状に手書きメッセージは必要?
「その後いかがですか」などと、余白に一言添えると、温かみが加わり効果的な場合があります。ただし、改まるべき相手、上位者などに対しては、自筆を添えることが失礼になる場合もあるので注意します。添え書きは付け足しで、付け足しはふつつかで失礼だからです。
子供の写真年賀状は出す相手を選ぶべき?
子供の成長は私事です。あまり親しくない相手に子供や家族の写真を載せた年賀状を出すのは失礼です。さし控えるべき。
句読点は打たなくてもOK?
とくに改まった儀礼的な年資状の文章では、句読点を打たずに深い敬意を示します。
いかがでしたか? そういえば、上司から学生時代の友人まで、「賀正」で印刷した年賀状を出してしまった年があったかも……。
では実際に、どんな内容にすればいいのでしょうか。すぐ使える文例を、『実例 大人の基本 手紙書き方大全』より、シーン別にいくつかご紹介します。
シーン別 すぐ使える年賀状文例
カジュアルな例
【1】
賀正
昨年はなにかとお世話になり誠にありがとうございます。
本年もどうかよろしくお願い申し上げます。
【2】
新年おめでとうございます
大変ご無沙汰しておりますが、皆さんお元気でおすごしのことと思います。
今年も貴家①にとってよい年でありますようにと、心よりお祈り申し上げます。
フォーマルな例
【1】
恭賀新年
旧年中は格別のご厚情を賜り②誠にありがたく
心より感謝申し上げます
本年も何卒宜しくお願い申し上げます
【2】
謹んで新年のご祝詞③を申し上げます
ご家族の皆様にはいよいよご機嫌うるわしく初春をお迎えのことと
心よりお慶び④申し上げます
本年も貴家御一同様には一層光輝あふれる年であることを
御祈念申し上げます
【3】
初春のお慶びを申し述べます
謹んで年頭の祝意を表し高堂⑤の万福⑥を衷心よりお祈り致します
本年も倍旧のご高誼ご厚情を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます
①「貴家(きか)」は相手の家の敬語表現。このような敬語を適所に用いると、さわやかな印象になります。
②「賜(たまわ)り」は、いただく、という意味。
③「祝詞(しゅくし)」は、お祝いの言葉。
④「慶(よろこ)ぶ」は「喜ぶ」より、改まった印象になります。
⑤「高堂(こうどう)」は、相手の家や家族の敬語表現。
⑥「万福(ばんぷく)」は、多くの幸せ。
紙で届く手紙は、もはや年賀状だけ、という方も多い現代、もらうとやっぱりうれしい年賀状。基本マナーをおさえながら、自分らしい言葉で季節の心を伝えたいですね。
1954年、東京都に生まれる。雑誌・書籍編集者を経て、執筆活動に入る。古今東西、有名無名問わずさまざまな手紙から手紙のありかたを研究、多様な切り口で執筆した手紙に関する書籍は数十冊に及ぶ。著書のほか、東京新聞でのコラム「手紙 書き方味わい方」、NHKのテレビ番組「先人たちの底力 知恵泉」「視点・論点」への出演などを通じて手紙の良さを紹介している。
著書には『夏目漱石の手紙に学ぶ 伝える工夫』(マガジンハウス)、『文豪たちの手紙の奥義』(新潮文庫)、『結果を出す人の手紙の書き方』(河出書房新社)、『気持ちが伝わる手紙・はがきの書き方全集』(PHP研究所)、『完全 手紙書き方事典』(講談社+α文庫)など多数がある。
『実例 大人の基本 手紙書き方大全』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。