東芝に代表される、日本の経済成長を支えてきた大手電機メーカーが大きな曲がり角を迎えている。かつて世界市場を席巻した日本の電機産業は、新興国の新規参入企業に市場を奪われ、世界の消費者に売れる魅力的な製品を開発できていないのが現状だ。
これは日本経済にとって「敗戦」とも呼べる事態である。長年にわたって日本の電気産業は、電力会社やNTTへの機器納入に依存した経営で収益を確保してきた。その一方で、半導体や家電、携帯電話などのビジネスは「副業」と位置づけられ、真の国際的な競争にさらされてこなかった。
アジアなどの国や地域がまだ工業化を十分に果たしておらず、キャッチアップに時間がかかった時代なら、それでも日本企業の競争優位性は保たれていたかもしれない。しかし、高度成長時代やバブル期の成功体験に酔いしれ、社内の人事抗争に明け暮れていた日本企業は、戦略的な経営戦略を深めてこなかった。これは着々と力を蓄え、戦略的展開を準備していた新興国企業とは対照的だ。日本のメーカーが没落していくのは、なかば必然的だったのである。
これまで営々と築かれてきた業界秩序が崩れていく中、電機各社は過去の失敗から何を学び、再興に向けてどんな手を打つべきなのか。本書はその処方箋を示してくれる1冊だといえよう。
目次
- 序章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」
- 1.東芝「電力ファミリーの正妻」は解体へ
- 2.NEC「電電ファミリーの長兄」も墜落寸前
- 3.シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上
- 4.ソニー 平井改革の正念場
- 5.パナソニック 立ちすくむ巨人
- 6.日立製作所 エリート野武士集団の死角
- 7.三菱電機 実は構造改革の優等生?
- 8.富士通 コンピューターの雄も今は昔
- おわりに
著者紹介:大西 康之
ジャーナリスト。1965年生まれ。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。産業部記者、欧州総局(ロンドン駐在)、編集委員、「日経ビジネス」編集委員などを経て、2016年に独立。企業や業界の深層を、人物を中心に描き出す手腕に定評がある。『稲盛和夫 最後の闘い』(日本経済新聞出版社)『ファーストペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(同)など著書多数。『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(日経BP社)は第13回新潮ドキュメント賞最終候補となった。最新刊は『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア』(新潮社)
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レビュアー:毬谷 実宏
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