あなたがもし、日本の将来に不安を抱いているのならば、本書を手にとってみていただきたい。なぜなら、これは日本でこれから起きることを「見える化」した1冊だからだ。
本書に書かれているのは、「不都合な真実」ばかりである。たとえば、東京オリンピックの年である2020年には、女性の2人に1人が50歳以上になる。39年には「深刻な火葬場不足」が起こり、40年になる頃には「自治体の半数が消滅の危機」に陥る──こうした著者の指摘はシンプルなだけに、読者の心にズバリ響く。
こうした現象が起きる最大の要因は、言うまでもなく少子高齢化に伴う人口減である。17年の時点で、日本の人口は約1億2653万人いるが、65年には約8808万人にまで減ると予想されている。
人口が減少すると、経済面と社会面の両方に大きな影響が出る。特に、人口に占めるボリュームの大きい「団塊の世代」が75歳以上になる2025年ごろには、社会保障費が膨張し、財政を圧迫するだろう。このような現象がドミノ倒しのように起これば、ひいては国家の存亡にすらつながりかねない。まさにゆゆしき事態なのである。
人口減少を、「静かなる有事」と名付けた著者の見方は鋭い。未来がどうなるかは誰にもわからないが、いますぐに行動を起こさなければ、未来に備えることはできない。そのことを強く警告する力作である。
目次
- 第1部 人口減少カレンダー
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2017年 「おばあちゃん大国」に変化
2018年 国立大学が倒産の危機へ
2019年 IT技術者が不足し始め、技術大国の地位揺らぐ
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2021年 介護離職が大量発生する
2022年 「ひとり暮らし社会」が本格化する
2023年 企業の人件費がピークを迎え、経営を苦しめる
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国」へ
2025年 ついに東京都も人口減少へ
2026年 認知症患者が700万人規模に
2027年 輸血用血液が不足する
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
……ほか - 第2部 日本を救う10の処方箋 ──次世代のために、いま取り組むこと
- 「高齢者」を削減
24時間社会からの脱却
非居住エリアを明確化
中高年の地方移住推進
第3子以降に1000万円給付
……ほか
著者紹介:河合 雅司
1963年、名古屋市生まれ。産経新聞社論説委員、拓殖大学客員教授、大正大学客員教授。中央大学卒業。専門は人口政策、社会保障政策。内閣官房有識者会議委員 、厚労省検討会委員、農水省第三者委員会委員などを歴任。2014年、「ファイザー医学記事賞」大賞を受賞。主な著作に『中国人国家ニッポンの誕生──移民栄えて 国滅ぶ』(共著、ビジネス社)、『医療百論<2015>』(共著、東京法規出版)、『地方消滅と東京老化──日本を再生する8つの提言』(共著、ビジネス社)など。
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レビュアー:毬谷実宏
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