日本の人口が減少しているのは誰もが知ることだろう。だがその一方で、住宅総数が右肩上がりに増えつづけている事実はご存知だろうか。一部の大都市を除き、日本中で空き家が増加している。野村総合研究所によると、このままの状態が続けば、15年後にはなんと3戸に1戸が空き家になってしまうという。
このような状況を招いてしまった要因には、新築住宅を好む国民性や、収益を追いもとめる住宅・建設業界など、さまざまなものがあげられる。
しかしそのなかでも、最も大きな影響を及ぼしているのが都市計画だ。長年、都市計画やまちづくりの研究・調査を続けてきた著者はそう断言する。とはいえ、著者は日本の都市計画すべてをいたずらに批判しない。あくまで現状を正しく分析したうえで、住宅過剰社会からの転換を図るための方策を提案している。
私たちにできるのは、自分たちの住むまちに関心をもち、今ある住宅・住環境が今後も良いものでありつづけるように考えていくことである。いま一歩を踏み出さなければ、次世代への負担はどんどんと積みあがってしまう。
今生きている世代だけでなく、未来に生きる世代のことも考える。その重要性をあらためて教えてくれる一冊だ。日本に住むすべての人たちにお読みいただければと願う。
目次
- はじめに
- 第1章 人口減少社会でも止まらぬ住宅の建築
- 1.つくり続けられる超高層マンションの悲哀
- 2.郊外に新築住宅がつくり続けられるまち
- 3.賃貸アパートのつくりすぎで空き部屋急増のまち
- 第2章 「老いる」住宅と住環境
- 1.住宅は「使い捨て」できるのか?
- 2.空き家予備軍の老いた住宅
- 3.分譲マンションの終末期問題
- 4.住環境も老いている~公共施設・インフラの老朽化問題
- 第3章 住宅の立地を誘導できない都市計画・住宅政策
- 1.活断層の上でも住宅の新築を「禁止」できない日本
- 2.住宅のバラ建ちが止まらない
- 3.都市計画の規制緩和合戦による人口の奪い合い
- 4.住宅の立地は問わない住宅政策
- 5.住宅過剰社会とコンパクトシティ
- 第4章 住宅過剰社会から脱却するための7つの方策
- おわりに
著者紹介:野澤千絵
兵庫県生まれ。1996年、大阪大学大学院環境工学専攻修士課程修了後、ゼネコンにて開発計画業務等に従事。その後、東京大学大学院都市工学専攻博士課程に入学、2002年、博士号(工学)取得。東京大学先端科学技術研究センター特任助手、同大学大学院都市工学専攻非常勤講師を経て、2007年より東洋大学理工学部建築学科准教授。2015年より同教授。共著に『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』(学芸出版社)、『都市計画とまちづくりがわかる本』(彰国社)がある。
提供元:株式会社フライヤー
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レビュアー:山下あすみ
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