このあと主人公は上京し、社会主義活動へと身を投じ、仲間と共にビラをまいたり、金持ちから金をゆすったりするのですが、故郷のこの坊さんに対して恨みがなさそうなのが不思議でした。フィクションかもしれませんが、「社会」の「階級」闘争には怒り、反抗するのはイケてても、「個人」の「家」の問題について奔走することはいわゆる「ダサい」とされてたような風潮がこのころはあったような気もします。(カラスヤ)
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』『カラスヤサトシの孫子まるわかり』『カラスヤサトシの戦国散歩』など多数。近刊にこの連載「文庫で100年散歩」を収録した『カラスヤサトシの日本文学紀行』があります。
近況:飛鳥山の博物館、記念館をコンプリートしてきました。