実際の川端康成の失恋に題材をとった作。タイトルの「非常」は相手のみち子からの手紙にあった「私には或る非常があるのです」からだと思われます。が、主人公の心の状態もまさに非常事態で、この手紙、女の面影、目にうつる景色、時事ニュースなどを錯綜させつつ東京、岐阜を彷徨(さまよ)います。この婚約破棄の真相が、近年いきなりあきらかになり、それを知るとまたなんともやりきれない読後感。(カラスヤ)
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』など多数。『アフタヌーンはカラスヤサトシのもの』を「アフタヌーン」で連載中。近刊に新書館『カラスヤサトシの孫子まるわかり』、講談社『カラスヤサトシ』9巻、リイド社『カラスヤサトシの戦国散歩』があります。
近況:力いっぱい食べて即寝るのは、ほんとに体に悪いことを思い知りました。