「養子縁組」と聞いて、みなさんはどのような印象を持つでしょうか。
日本ではまだ、めずらしいことと捉えられる場合が多いようですが、海外では家族のスタイルとしてごく一般的です。アンジェリーナ・ジョリー、メグ・ライアン、シャロン・ストーンなど、養子を迎えている欧米のセレブも少なくありません。
晩婚化の影響もあり、日本では不妊治療を受ける患者の高齢化が進んでいます。歳を重ねるごとに妊娠しづらくなるものの、“やめ時”がわかりづらいことなどから、長期に渡って治療を受け疲弊してしまう人も多く存在するのです。今日、紹介する『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』に登場する方のほとんどは、不妊治療を体験してきた人たちです。
血のつながりのみが家族を作るわけではありません。さまざまな家族の形を知ることで、きっとあなたの考え方も変わってくるはず。本書に登場する夫婦の経験から、特別養子縁組の3つのポイントを考えてみましょう。
1. 血のつながりはどこまで重要なのか
子どもがほしくて不妊治療を続けているけれど思うような結果が出ない……。そんなみなさんがこだわるのが「血のつながり」。養子を迎えるとして、自分が産んだわけではない子どもを愛することができるのか、不安を抱くのはあたりまえのことです。実際に養子を迎えた方々はどのような生活を送っているのでしょう。
44歳と46歳でともに0ヵ月の子どもを迎えたマユミさんとヒロユキさん夫妻は「正直に言うと、最初はDNAにこだわっていたところもありました。今は、それほど大事なものなのかな、と疑問に思います。これから起こることへの不安をすべてひっくるめても、この子が我が家に来た幸せに勝るものはありません」(ヒロユキさん)と語ります。
また、34歳・36歳・38歳でともに0ヵ月の子どもを迎えたケイコさんとケンジさん夫婦は、「自分で産んでないだけで、あとは普通の子育てと変わりません。ごはん食べて、笑って遊んで、小さなことでイライラして。育児ってたいへん。でも、幸せ!」(ケイコさん)
と、養子を迎えたお父さんお母さんの多くは、子どもと一緒に暮らすことで当初抱いていた血のつながりに対するこだわりを乗り越え、より大事なものを見つけることができているようです。
2. 先の見えない不妊治療に対する不安
37歳のときに11ヵ月の子どもを迎えたアイリさん。彼女はいくつもの病院を転々としたものの、望むような結果は得られませんでした。彼女は、当時の状況を「深い闇の中にいるようだった」と語っています。
結果が出ない不妊治療を続けていくうちに、うつ状態になるケースや、フラストレーションをパートナーにぶつけるケースもあります。本書『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』では、やめ時を見失ってしまわないためにも、不妊治療をいつまで続けるのかをパートナーと話しあっておくべきとアドバイスしています。
また、多くの児童相談所、養子縁組に関わる民間団体では、育て親に年齢制限を設けています。このことからも、不妊治療のやめ時、夫婦で養子を迎える時期について、あらかじめ考えておく必要があるでしょう。
3. 本人への告知・周囲への告知
子どもが大人になっていく段階で、本人に養子であることを伝えるかどうかは、養子を迎えた家族にとって大きな問題となることが多いようです。
IT企業で働く30歳のフミさんは、25歳のときに養子であることを伝えられました。告知を受けた直後は、事実を受け止められなかったそうですが、今では親から受けてきた愛情を再確認するようになり、特別なわだかまりもなく過ごしているそう。「真実告知のタイミングとしては遅いほうですね。でも、両親との揺るぎない関係が築かれ、物事を理解できる年齢で直接親から聞けたのは幸せでした」(フミさん)。
子どもが自分のルーツを知りたいと思うのは自然なことです。生みの親の存在を知り、周りの家庭と比較し、事実をどう受け入れるべきか悩む子どももいます。混乱をしている子どもが、「この人は絶対に裏切らない」と思えるような親子関係を築いておくことが大事なのです。
『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』では、養子を迎えた8つの家庭のエピソードを紹介しています。「子どもを産みたい」という気持ちよりも「子どもが欲しい」「新しい家族を迎えたい」という気持ちのほうが強いのであれば、ぜひ養子縁組のストーリーに耳をかたむけてみてください。家族のあり方はひとつではなく多様化していることに、きっと気付かされるはずです。