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2016.07.24

特集

人間関係が苦手な人へ「あなたの“過敏”、発達障害かも?」

発達障害の人は、なぜ人間関係でつまずくのか?
どんな問題が待ち受けているのか? なぜうまくいかないのか? どうすれば解決できるのか? 多数の当事者と専門家への取材をもとに、その現状から解決策までをマンガでルポ!

発達障害の人は「からだ」と「こころ(脳)」にハンデを抱えている

『発達障害うちのこ、人づきあいだいじょーぶ!?』

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発達障害がある人は「空気が読めない」「無神経」「思いやりがない」などと言われることがあります。が、発達障害があっても、人づきあいが苦手でも、当事者は深く考えているし、いろいろな工夫をしています。 では、どうしてうまくいかないのでしょう? 発達障害の特性はひとりひとり違いますし、人間関係がうまくいかない原因はいろいろ考えられますが、「からだ」と「こころ(脳)」の問題が大きく関係しているようです。

からだのハンデ

発達障害の人が人間関係がうまくいかない原因は、何よりもまずからだの問題が大きいと思われます。

▼特定の音に敏感すぎて苦痛を感じる<聴覚過敏>

▼強い光が苦手<視覚過敏>

▼肌に触れるものに敏感<触覚過敏>

▼外部からの刺激に対して感覚が鈍い<感覚鈍麻>

そのほか、特定の書体に苦痛を感じる、においに対して敏感すぎて苦痛を感じる<嗅覚過敏>などもあります。

こころ(脳)のハンデ

発達障害の人によく見られる感じ方や考え方の特性もハンデになります。人間関係に影響する特性のうち、以下の3つは要注意です。

▼一度思い込むと考えを変えられない

▼物事をなんでも“白か黒か”で捉えてしまう

▼“三段論法思考”で考えがち

発達障害の人の現状 [夫婦関係] 当事者の経験から

~妻に発達障害がある夫婦の場合~(木村さん/43歳/女性)

「小さな頃から片づけや作業の段取りがうまくできなかったんですが、主婦になってからもダメで……。一日中座るヒマもないほど働いているのに、家事が進まないんです。

夫との関係はギクシャクしていきました。家事をきちんとやりたいのに、できない自分が 情けなくて悲しくなりました。こんなことが何回も重なって、ついにパニックになってしまいました。精神科を受診して検査を受けると──ついた診断は『アスペルガー症候群』でした」

その夜、ご主人に診断のことを話した木村さんが、どのように生活を変えていったのかは『発達障害 うちの子、人づきあい だいじょーぶ!?』で紹介しています。

発達障害の大変さを軽くするためにできること

発達障害の当事者やその家族などのための自助会「アスパラガスの会」主宰の狸穴猫(まみあなねこ)さんにお話をうかがいました。

⇒狸穴猫さんのブログはこちら http://asdlife.net/

【Q】発達障害の人が大変な思いをしているのはよくわかりました。その大変さを軽くするアイディアがあったら教えてください。

【A】まずからだのつらさをとる工夫から始めましょう! イヤーマフや遮音カーテンなどを使って苦手な刺激を避けるようにしておくとか、規則正しい生活をしたり運動で体力づくりをするとかですね。 子どもに対しては、親や教師がからだのつらさを理解したうえで進んで支援してほしいです。感情的に怒ったり無理に友だちの輪の中に入れようとするのは逆効果になりやすいです。それと、誤った思い込みをさせないように保留つきで説明するのも大切です。

あと、トランプやキャッチボールで遊ぶのもいいですよ。「駆けひき」や「やりとり」を単純なかたちで具体的に体験できますから。

【Q】からだのことや考え方についていろいろ教えていただきましたが、何から始めたらいいでしょうか?

【A】まずは、ウォーキングやボディーワークなどで体力づくりするのをお勧めします。 それから挨拶! 人間関係の基本です。挨拶は「自分は敵じゃない」ことを示す大切な行動です。騙されたつもりでやってみてほしい! また、からだを動かせば体調も整ってきます。気力が出てきてこころも元気になっていきます。すると誰かと話したくなるんです。

「新しい関係」を目指して

発達障害があると、その特性のため誤解されやすくなります。でも、他人との衝突を望んでいるわけではありません。本人に悪気はなく、実は「仲良くしたい」「ちゃんとしたい」と思っているものなのです。 問題は、「仲良くする」ためにどうすればいいのか、「ちゃんとする」とはどういうことなのかがわからない、という点にあります。周囲の人と上手につきあっていくために、今後は家族への適応(「家庭適応」)を目指した支援と、当事者の努力が欠かせません。

「家庭適応」を目指す支援はまだ始まったばかりです。医師やカウンセラーの中にも、「カサンドラ症候群※1」がいかに多く、苦しみがいかに深いかを実感する人が増えていますが、反対に専門家にすら理解してもらえず、傷ついたという話もまだ耳にします。  この問題については、私の所属する大学の臨床心理センターで専門外来を設けて取り組み、また未来の専門家たちにもこの領域について学んでもらえたらと思っています。一方で、実家の両親や友達など、周囲の人たちがすこしでもこの問題を理解してくれるだけで、パートナーが救われることがあります。

最後に、どんなに苦労していても、パートナーとの間にはいいことや楽しかったこともあるはずです。私は、そういう面も大切にしてほしいと思っています。ASDについての理解が広まり「相手も想っているのだ。通じるのだ」と思えれば、もう一度よい面に気づくかもしれません。そこからいつか、新しい関係の形が生まれてくるように思うのです。
(コラム《これからは「家庭適応」も大事です》 帝京平成大学准教授 滝口のぞみ より)

※1カサンドラ症候群…アスペルガー症候群(略称ASD。現在は「自閉症スペクトラム」)の夫または妻(あるいはパートナー)と情緒的な相互関係が築けないために、配偶者やパートナーに積もり積もったストレスが引き起こすうつ病や動悸などの症状

著者プロフィール

著者イラスト

かなしろにゃんこ。

千葉県生まれ、漫画家。1996年に「なかよし」でデビュー。代表作に「ムーぽん」ほか。『大人も知らない「本当の友だち」のつくり方『11 歳の身の上相談』(ともに講談社)などにもイラストや漫画を寄稿している。著書に『漫画家ママの うちの子はADHD』(田中康雄監修)『発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?』(以上、講談社)『発達障害でもピアノが弾けますか?』(中嶋恵美子原作、ヤマハミュージックメディア)などがある。

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