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2016.07.05

特集

全選考委員が絶賛の超大型新人! 崔実のどこが凄い?

全選考委員絶賛! 21世紀を代表する青春文学の誕生!

問題児のジニに、危なっかしいほどの生命力が宿っている。──青山七恵氏

一言でいうなら、これは「境界の物語」だ。──高橋源一郎氏

いつ暴力にさらされるか分からない者だけの知る緊張感に満ちている。──多和田葉子氏

素晴らしい才能がドラゴンのように出現した!──辻原 登氏

この小説との出会いに感謝せずにはいられない。──野崎 歓氏

二つの言語の間で必死に生き抜いた少女の革命

『ジニのパズル』表紙
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オレゴン州の高校を退学になりかけている女の子・ジニ。ホームステイ先でステファニーと出会ったことで、ジニは5年前の東京での出来事を告白し始める。

ジニは日本の小学校に通った後、中学から朝鮮学校に通うことになった。学校で一人だけ朝鮮語ができず、なかなか居場所が見つけられない。特に納得がいかないのは、教室で自分たちを見下ろす金親子の肖像画だ。

1998年の夏休み最後の日、テポドンが発射された。翌日、チマ・チョゴリ姿で町を歩いていたジニは、警察を名乗る男たちに取り囲まれ……。

受賞のことば

著者写真

あまりにも呆然としていた。最終候補の連絡が来てからは生きた心地がしなかった。初めて担当者の方と会う約束の日は、前の晩から怖くてたまらなかった。顔をあげると、いつの間にか講談社に着いていた。慌てて降りると、Kodanshaではなく、Kudanshitaだった。ため息の中に、まぬけで力ない声がまざった。

この作品を書く前、何者かの悲鳴が聞こえていた。「ここから出して。お願い。息が出来ない」と、声の主はそう叫んでいた。しまいには叫ぶだけでなく、頭蓋骨をかち割ってやろうと、脳ミソの硬膜を叩き始めた。「食道を下って血管の中に侵入し、お前の心臓を食べてやる」と彼女は私を脅した。私は、書き出した。出してやるから、静かにしてくれ、と願いながら。書いている途中、以前、一次予選にも通らなかった群像新人文学賞を思い出した。私にとってのブラックホールだ。書いた物をしっかりと吸い込み、責任を持って消し去ってくれる。ブラックホールへ異物を投げるのは有料で、400円ほどかかったと思う。10月31日の午後4時頃、東京駅近くの郵便局で、うるさかった声の主にしっかり別れを告げ、帰りの電車の中で、ようやくうとうとと眠りについた。私は、彼女と決別した。何を書いたかなんて覚えていなかったし、それで良いはずだった。私とはもう関係のないことなのだから。わざわざ読み返すことも、誰かに読ませることもなかった。

それなのに、一本の電話と共に、彼女はブラックホールから舞い戻って来てしまった。それも、呑気に美味しそうな飴玉を持って。携帯画面に表示された03という市外局番を見た瞬間、レンタルDVDの延滞連絡だと思った。「最終選考だなんて嘘だ」と叫ぶと、電話の相手は優しい声色で少し笑いながら、嘘でもツタヤでもないですよ、と言った。私は、その日の晩から漠然とした不安を抱き続けてきた。

この人生、一体何がどうなっているのか。呪われているのか、恵まれているのか。呪われているのだとすれば、その呪いをかけたのは自分以外の誰でもない。そんなことを考えていると、車内で正面に座っていた男性の帽子に書かれた文が目に止まった。Fear is often greater than the danger. その言葉を背に、私は護国寺駅で降りた。どうせなら、与えられたこの今世、作家として生き抜いてやりたい。ビルの前に立った時には、そう思っていた。

著者サイン

崔 実(チェ・シル)
1985年生まれ、東京都在住。
2016年、本作で第59回群像新人文学賞を受賞。

青春文学の誕生に、全国の書店員さん大熱狂!

この作品にありきたりなコピーはいらない。心臓をわしづかみにされ、頭にがつんとくらう文章に出会えるのはそうそうないことだ。一筋縄ではいかない作家が誕生したのは間違いない。欺瞞に満ちたニュースを見る前に、これを読めと言いたい。(吉江美香さん/教文館)

重苦しく、衝撃的な展開をみせるのに、全体ではすがすがしい少女の成長物語になっている。かつて読んだことのない小説だ。(内田俊明さん/八重洲ブックセンター本店)

テーマは重いが、ジニの行動は軽快で純粋でアツイ!そして、読後は心が軽くなる。老若男女隔てずオススメの一冊。(井上哲也さん/大垣書店高槻店)

ジニの焦燥と苦痛がありありと伝わってきて、読んでいるこちらまで苦しくなった。(猪股宏美さん/旭屋書店新越谷店)

もしジニに会うことがあったら「ジニは素敵。だれの助けも必要なかったね。」と伝えたい。(鈴木順子さん/鹿島ブックセンター)

この作品の放つ凄まじい熱量に圧倒されました。そして著者の「受賞のことば」に震えたのは私だけではないはず。書くために生まれてきた人なんでしょうね。鳥肌が立ってしまいました。(山本机久美さん/柳正堂書店オギノ湯村SC店)

主人公であるジニの造形が出色だ。特にたった一人、革命家のように立ち上がる姿は鮮烈だ。その姿は個人の視点からむしろ普遍的な問題として視座を広げ、文学というものの意義まで突きつけてくる。非常に迫力をもった作品だった。(山根芙美さん/蔦屋書店熊本三年坂)

少女が納得するまで闘いを挑んだ、心の革命。民族とは文化とは、と考えました。(佐伯敦子さん/有隣堂伊勢佐木町本店)

この本を読んで、文学の世界に目覚める人がたくさんいると思います。そして、何かしら苦しんだり悩んだりしている人が勇気をもらえるんじゃないか、そんな力を持った素晴しい文学だと思います。(井辻吉博さん/ブックファースト京都店)

芯の強いジニ。いろいろあったジニ。これからの人生、幸せを願うばかりです。(髙田有紀さん/紀伊國屋書店大津店)

重いテーマではあるけど、主人公ジニの未熟で傷つきやすいがストレートに物事を考える十代らしい視線で描いてあるので、読んでいてこちらも壁をつくらずにその言葉を受けとめられました。(三瓶ひとみさん/丸善丸の内本店)

一人闘い続けたラスト、彼女のただひとつの願いがかなったその瞬間に私の中の全ての扉が開くのを感じた。(久田かおりさん/精文館書店中島新町店)

ジニの危ういまでの感受性に触れ、自身が失ってしまっている感性を掘り起こされた気がした。いつの日からか大人の殻の中に閉じこもった自分をこの小説は開放してくれた。僕もあの頃持っていたピースを探しに行こう。(阿久津武信さん/くまざわ書店南千住店)

この世界で生きていくうえで、何が正しいとか何が悪いとか……人間が勝手に決めているだけだけど、思いこみは凶器にもなる、と思った。人間の深いところをえぐる小説でした。(水口真佐美さん/ジュンク堂西宮店)

強烈なパワーを持った作家が誕生した。なんだろう、この引力……。ぐいぐい引っぱられて抗えない力強い魅力がある。この作家の誕生は多くの人々に祝福されるだろう。(大宮和子さん/浅野書店)

国と国の間、言葉と言葉の間、あるいは、決してそろわないパズルを抱えて生きるすべての人に読んでほしい。(浦塚未来さん/青山ブックセンター六本木店)

ジニの「宣言」に綴られた言葉のひとつひとつが、そこにいたるまでの彼女を傷つけるいくつもの出来事が、なまなましい痛みをともなって心に突き刺さる。(石本秀一さん/ジュンク堂書店ロフト名古屋店)

抑えきれない溢れるパワーに圧倒される作品でした。(内山はるかさん/SHIBUYA TSUTAYA)

一人の少女が背負うにはあまりにも大きい過酷な試練。それに全く怯むことなく立ち向かうジニの姿に、作品自体が持つパワーに、圧倒されっぱなしでした。(藤原七都恵さん/ジュンク堂書店松山店)

学校を退学させられようとしている少女ジニ。一体ジニに何が起こっていたのか、読み進めていくうちに更に大きな衝撃を受けました。まさかこんなに根深い問題を中心とした物語だったなんて。(栗原苑子さん/あおい書店中野本店)

息を止めて読んで、ラストにやっとリラックスした感じがしました。ジニ、よかったね。(石山泉さん/八文字屋北店)

差別の生まれる社会そのものに対抗するかのような主人公ジニの力強さに勇気づけられるような気がした。(河合駿介さん/ジュンク堂書店吉祥寺店)

学校でも会社でも家庭でも、なかなか自分の居場所が見つからない悩みを抱える全ての人へ捧げたい作品です。すごい作品に出会ってしまいました!!(竹腰香里さん/丸善名古屋本店)

さまざまな色合いを持った出口を不器用に探し、抗いようのない今昔に対して答えを見出そうとする。まさしく王道の青春小説。(山本亮さん/大盛堂書店)

パワー・トゥー・ガールズ!と思わず叫んでしまった。女性のみならず、すべての小さきものに力をくれる小説。(今井麻夕美さん/紀伊國屋書店新宿本店)

この社会、この時代が生み出した価値ある文学世界に、そして鮮烈なデビューに、心底痺れました!(内田剛さん/三省堂書店営業企画室)

わたしの子どものころに重ねて共感できるところが多かった。(冨田昭三さん/明林堂書店別府本店)

自らの出自や環境に翻弄されて波間をさまよう寄る辺ない不安さというものが、女子中学生という不安定な年ごろの存在と相まって、読んでいるわたし自身の存在意識をも問いかけてくるようでした。(安田有希さん/紀伊國屋書店横浜みなとみらい店)

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