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2016.02.05

レビュー

【父母必読】「ダウン症児を育てる」愛情と本音120%の子育てとは?

この本は、小学3年生のダウン症児の長男を含む3人の男児の母である、 漫画家・たちばなかおるさんの実体験に基づく本音エッセイ。
ダウン症児の子育てエッセイ『毎日の生活と支援、こうなってる ダウン症児の母親です!』に続く、待望の第2弾です。

最初は、「親が死んだらどうなるの? 将来のためにどのような教育をしたらいいの? など、ダウン症児の子育ての不安を解決するノウハウ本」と思いこみ、当事者でなければ理解できない部分も多いのではと心配しましたが、それはまったくの杞憂でした。作者独特のユーモア溢れる文体、思わず笑ってしまうお茶目な漫画、冷静な観察眼に基づく的確な分析、愛情と本音120%のエピソード。これらにに大きく頷きながら、楽しく一気に読み終えました。
ユンタ君や7歳、4歳の弟たちのサポートで、日々てんてこ舞いしつつも一生懸命な作者の姿に、頭が下がる思いです。

作者があとがきにも記している、できるようになることを焦らず「今日できるようになったことを愛情を込めて褒めていこう」という子育ての姿勢は、すべての子育てにおける根本なのではないかと思いました。

お受験や習い事など、子どもに過度なプレッシャーや期待をかけてしまいがちがな昨今の子育て事情の中、この本が、見失っていたものを思い出させてくれるようです。

私自身、子どものよりよい人生を願うという正論を持ち出し、知らず知らずのうちに自分の理想を押しつけていることもあり、気をつけたいと反省させられました。

また、子どもが成長し、施設等で円満に社会活動を営んでいけるかどうかという観点から言うと、障害の有無ではなく、「誰かに愛され、必要とされて育つ」ことがずっと大切、という専門家の言葉に、納得。 障害の有無にかかわらず、愛されて育った子どもは、自分の価値を肯定できるゆえに「生きるチカラ」があるというのが、真実ではないでしょうか。

「自分が愛され必要とされている」実感がある子どもが一番強いし、私自身、そのように子どもたちに感じてもらえているのであれば、ひとまず子育ては成功なのではないかなと思っています。

子育てに悩めるすべての方にとって、子供が人生を生き抜けるように導く子育てのヒントが、この本には、ギュッと詰まっています。


エッセイのほか、専門家のアドバイスや施設見学ルポも充実しており、その中でも特に私が感動したのは、障害を持つ方を積極的に雇用するパン屋さん「スワンベーカリー」へのインタビューでした。障害を特別視せず一つの個性と受け止め、各々ができる仕事を見つけ、ボランティアではなくビジネスとして利益を追求していこうという姿勢に共感しました。

「すべての働ける障害者が自分の力で働いて生きる社会を実現したい」という言葉は、障害者だけではなく、女性、高齢者にも当てはまることですし、まさに現在の日本の課題だと思います。子育て中の方はもちろん、人材採用について関心がある経営者の方など、いろいろな方に、是非読んでいただきたい一冊です。

レビュアー

常山あかね イメージ
常山あかね

早稲田大学卒業後、損害保険会社勤務。育児を機に退職後、SOHOでインターネット業界の仕事に携わる。1999年、メルマガやWEB等オンラインコンテンツを専門にしたライタープロダクション「企画室壱頁」を個人事業登録。2006年法人化。現在、(株)壱頁 代表取締役として、Google社と共催で、リモートワークを実現するGoogle Apps for Work™ 活用術のセミナーに力を入れている。「仕事も子供もあきらめない」女性が生き生きと輝く日本を目指すソーシャルベンチャーの代表として、日経新聞をはじめ、マスコミ掲載多数。消費生活アドバイザーとして、テレビ番組のコメンテーターも務める。 http://壱頁.jp   http://www.page1.ne.jp/

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