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2026.10.10

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生きづらさの正体に迫る作家ふたりの魂の往復書簡

「本音を言えば、友だちになりたいです」
このタイトルは三年前、トークイベントでふたりが初めて出会った後に、紗倉さんが向坂さんに送ったDMの一文だそうです。この出会いを一度で終わらせたくない、相手の人生に少しだけ踏み込みたい、でも負担をかけたくない、という様々な配慮がにじんだ呼びかけに対して、向坂さんは「まずはLINE友だちからでいいでしょうか」と返したとか。
もともと集団が苦手で、「べつに友だち自体がほしいわけではない」という向坂さんと紗倉さん。そんなふたりの最初はぎこちなく始まった関係は、ふたりで一冊の本を読んで語り合う、という読書会を重ねるなかで、大きく変化していったのです。
たとえば上野千鶴子さんと鈴木涼美さんの『往復書簡 限界から始まる』を読んで、仕事における搾取と主体性の割り切れない関係について考え、川上未映子さんの『夏物語』を読んで、生まれたことの痛みと生むことの暴力を考え、……その時々の身近な体験を交えながら、一つの疑問が次の疑問を呼び寄せるようにして、往復書簡のテーマは広がっていきました。
「ひとり」に対する社会の圧力、許せない相手との向き合い方、性的・職業的差別とどう闘うか、性欲と暴力の問題、そして女性として「書く」ことの意味……。ふたりがここで行ったのは、「あまりに大切なことなのに見過ごされ、軽視され、あたかもなかったかのように土を被せられ踏み固められてしまったような事柄」(本書より)を、ふたりで再発見し、土埃まみれになりながら掘り起して、とことん語り合うこと。
ふたりが互いに差し出す手紙の文章は親密でカジュアルな言葉ながらも、容赦のない率直さで、いま私たちが抱える生きづらさの正体に迫っていきます。そんなふたりの対話を読みながら、「おまえはどうなんだ?」と刃を突き付けられたかのように、息が止まる瞬間が何度もありました。
本書はそうした苛烈な真剣勝負を経て、ふたりの女性が互いへの深い信頼をはぐくみ、唯一無二の「友だち」になっていく過程を描いた、感動的なルポルタージュでもあります。
本書で紗倉さんは、まさに今回の向坂さんとの出会いのような、「すぐれた他者との出会い」を見逃さないことの大切さを書きつけています。大人になるにつれ、いつのまにか様々な鎧を身に着けてしまった私たちが、「言葉」を通してもういちど裸になり、心の底に隠していた傷をみつめるとともに、相手の傷をも引き受けていく――。そんな新しい関係性の希望を示してくれる、貴重な一冊です。

――文芸第一出版部 Y.M.

【著者プロフィール】

右から向坂くじらさん、紗倉まなさん。撮影:大坪尚人
向坂くじら (さきさか・くじら)
1994年、愛知県生まれ。詩人。学習塾「ことぱ舎」代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」朗読担当。著書に詩集『アイムホーム』『とても小さな理解のための』、エッセイ『夫婦間における愛の適温』『犬ではないと言われた犬』『ことぱの観察』、共著に『群れから逸れて生きるための自学自習法』など。小説『いなくなくならなくならないで』『踊れ、愛より痛いほうへ』が、それぞれ第171回、第173回芥川賞候補作となる。
紗倉まな (さくら・まな)
1993年、千葉県生まれ。作家、AV女優。国立高専在学中の2012年にSOD専属女優としてAVデビュー。著書に小説『最低。』『凹凸』『春、死なん』『ごっこ』『うつせみ』『あの子のかわり』、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』『MANA』『働くおっぱい』『犬と厄年』など。『最低。』は瀬々敬久監督により映画化、東京国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされた。また『春、死なん』『うつせみ』が、それぞれ第42回、第47回野間文芸新人賞候補作となる。

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