離婚家庭で育った子どもとは、何人も出会ったことがある。それなりに覚悟が据わっているというか、たくましい印象がある。否応なくそうなった(たくましくならざるを得なかった)という一面もあるだろう。はからずも生来の生存本能が発揮された子どもたちのほうに、むしろ大人のほうがいろいろ教えられる場面も多いと思う。
それでも、漠然としたイメージのまま生きていくよりは、基礎知識として「離婚の現実」を知っておいたほうがいい。本書は離婚後の子育てにおいて起こりうる事態、乗り越えるべき課題、各方面にわたる法的支援策などが書かれたガイドブックである。監修をつとめたのは、白梅学園大学子ども学部子ども心理学科教授を務める福丸由佳。イラストや図解もふんだんに掲載され、さまざまな感情の機微が分かりやすく説明される。未婚の読者が読んでも、全ページに大切なことが書かれていると言っても過言ではない。
本書冒頭のイラストからは、結婚生活がそうだったように、離婚もまた「ひとつの船出」と言える旅路の始まりであることがわかる。
とはいえ、若く未熟で、人生経験も少ない子どもたちが(子どもなのだからそれが当然なのだけど)、突然の環境の変化に戸惑うことも想像に難くない。それでいて感受性は豊かだから、親のサポートはより重要になる。
離婚はプロセスとして捉えられると述べましたが、それは親から見てのこと。子どもにしてみれば親の離婚は“情報の少ないなか、ある日突然”という印象になりやすいものです。
家庭内の不和を感じ取っていることはあっても、「親が別れたらどうなるのか」という先々の見通しまでは、大人からの説明なしに子どもが理解するのは難しいでしょう。それゆえ、子どもには不安や心配、悲しみなど、さまざまな気持ちが生じやすいといえます。
親の離婚は、子どもにとってはやはり大変な出来事であり、その影響は小さくありません。しかし、必ずしも離婚が子どもにとって常にマイナスの体験になるとは限らず、前項で述べたとおり、周囲の理解やかかわり次第でその影響をやわらげることはできます。私たちの心には回復力や弾力性、すなわち“レジリエンス”が備わっているからです。
「もう無理なの?」「元通りになって」などの訴えがあったとき、思いは否定せず受けとめましょう。ただ、離婚の事実が変えられない以上、「そうだね、そう思うよね」と共感は示しつつ、現実にはできないことはきちんと伝えます。
「子どもとの関係の築き方」という章では、離れて暮らす側の親と子どもとの交流についても描かれる。図版のなかで印象深いのは「気持ちが変わってもいいことを伝える」という一節だ。子どもの気持ちは移ろいやすく、またそのときは本音をきちんと口に出せているとも限らない。そういう「表に出ない感情」まで考慮して書かれた本である点も信頼できる。
本書後半では、離婚家庭の親同士の関係、親自身のケアについても語られる。目の前の問題に取り組むことが最優先になってしまい、自分をいたわることも、周囲に助けを求めることも二の次になってしまうのは、現代日本人にはありがちな「自己責任感」の悪しき発露なのかもしれない。
子育てを親だけに任せず、社会全体で支えていこうという視点は、どんな家族に対しても共通です。さらに、親の離婚で揺れる子どもたちの心を守るには、親の力ももちろんですが、やはり親だけに任せず、まわりの人の存在やかかわりも大切です。
最終章では、離婚家庭を支援する制度の具体例も示される。これらの制度が、今後も適切に運用されるのかは未確定だが、利用できるものは絶対に利用したほうがいい。離婚弁護士が必要なら「自治体を通しての弁護士への法律相談は、多くの場合“30分無料、1回まで”など、時間や回数が限られる。聞きたいことは事前に整理しておく」といったディテールも、下線を引いて覚えておくべきだろう。
今後、この国は「人々が助け合う社会」の色彩を、いよいよ強めていくのではないだろうか。それは希望的観測というより、いちど最底辺まで堕ちた社会状況の反動として、そんな世の中になるのではないかと予感している。図らずも痛みや別れをいち早く経験した人々には、この世界を生き抜くサバイブ力も、先んじて宿るような気がしてならない。







