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2026.07.31

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宗教建築は、その宗教を理解するための“巨大な書物”だ!

読み終えると、長旅から帰ってきたような心地がした。本書は「回る」「進む」「彼方を見る」という3つの礼拝法を軸に、全九章にわたって古今東西の宗教建築を取り上げている。「宗教建築のもつ空間構造が礼拝のありかた、つまり礼拝法を決めている」と語る著者は、宗教建築を次のように捉えている。
宗教建築は聖典や経典とならんで、あるいはそれ以上に、宗教を知るのに適した創造物である。なぜなら、文字が読めない人びとにもその宗教の本質が伝わるように造られているからだ。実際、著者にしても探訪した土地のことばをほとんど知らない。それでも宗教建築を案内しようと試みるのは、文字が読めなくても宗教の本質を体感できるからだ。宗教建築は、その宗教を理解するための“巨大な書物”と言えるのだ。
さらに著者は、宗教建築を体感する意味についても、こう述べている。
今日、建築といえば、装飾を剥ぎとり、構造や機能だけがむき出しになったモダニズム建築が主流になっている。だが、空間の感覚を通して世界観を体験してもらうことが建築の最終使命だとすれば、その使命をもっともよく果たすのは“宗教建築”である。だから宗教建築を体感することこそが、“建築”を味わう王道であり、かつ最短の近道と言える。
そうして著者は、仏教誕生の地として知られるインドを皮切りに、中国、韓国、日本、フランス、ギリシャ、イタリア、スペインと、世界を飛び回りながら、各地の宗教建築を詳細に紹介する。時にそれは紀行文のようでもあり、私は著者の目を借りることで、まるで自分もその地へ降り立ち、現地で生の解説を受けているかのような錯覚を覚えた。その臨場感は、古代ローマのパンテオンについて書かれた次の一節にも表れている。
円柱の林立する柱廊玄関をへてパンテオンの中に入る。すると、あっと驚く展開が待っている。外部からは想像もつかない、大ドーム空間の真っただなかにすでにあなたは立っている──
厚い壁にぐるりと囲われ、明かりはと言えば、大ドーム天井の頂点に開けられた、オクルスと呼ばれる、大きな円い穴から差し込む自然光のみ【図版】。オクルスとは眼を意味する。いわば<天の眼>である。
著者は建築家として、これまで建築や歴史をテーマに数多くの著作を手がけてきた。本書の中でも、折に触れ登場するそれらの著作に、興味をもった読者は、きっと次の読書へつながるきっかけを得るに違いない。その際、巻末に掲載された詳細な参考文献の一覧は、大きな助けとなるだろう。

また本書には、著者のこんな願いも込められている。
本書が読者を誘うのは宗教建築が発している、人類が記憶すべき多様な世界観の数々である。そこから、どんなあらたな気づきが得られるだろうか? 本書で得られる宗教建築のイメージは従来のそれを塗り替え、一新するものとなることを願う。
いま、世界では各種の分断が深刻化し、社会の危機が叫ばれている。日本も例外ではない。だからこそ、異なる文化や思想に触れ、他者を知ることが重要だ。「巨大な書物」としての宗教建築を読み解く旅は、私たち人類がこれまで積み重ねてきた営みを知る旅でもある。宗教や建築の知識のみならず、その土地の成り立ちや歴史、思想に至るまで、つぶさに紹介してくれる本書から、新たな視点を手に入れよう。

レビュアー

田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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