本来、「異常」という言葉は、「通常」の状態から大きく異なることを意味します。気象学の分野では、この「通常」の定義には、現在からさかのぼって過去30年間の平均値が用いられます。これに対して、異常気象という言葉は、本来は30年に1度程度しか起こらない非常に稀な現象に対して使う言葉です。
しかし、異常だったはずの現象が昨今は毎年のように身近に発生し、珍しいことではなくなってきています。異常な現象があたりまえのように起こるというこの矛盾は、いったいなぜ生じているのでしょうか。
著者は気候力学の専門家で、現在は東京大学大気海洋研究所気候システム研究系准教授を務めている。気候モデルシミュレーションを活用し、気候変動や異常気象のメカニズムを研究するとともに、数ヵ月から数年先の気候予測にも挑んでいるという。
そんな著者は、現代を「異常気象と共存する時代」と捉え、「先人の知見を頭に蓄えた上で、今後起こることを『考える』こと」が求められていると諭し、執筆のねらいについてこう語る。
本書では、日本で起こる異常気象を皆さんが正しく「考える」ために必要となる材料を一通り揃えました。考えるためには、場合によっては専門的な内容まで踏み込む必要があるでしょう。本書では、専門的な内容をなるべく平易に一般的な用語で説明することを心がけました。難しい数式も登場しません。しかし、内容に妥協はしていないつもりです。
特に興味を引かれたのは、第5章に登場する「イベント・アトリビューション」だ。
「アトリビューション」(attribution)という言葉は、「~のせいにする」という意味を持ち、目の前で実際に発生した異常気象(イベント)が何かのせいであることを証明するアプローチのことをイベント・アトリビューションと呼びます。この「何か」は地球温暖化だけでなく、エルニーニョ現象やインド洋の変動など、異常気象の要因となり得るものすべてが含まれます。しかし昨今は、イベント・アトリビューションというと地球温暖化による影響を証明する意味で用いられることが多くなりました。
気象に関する基本的な知識から、最新のデータや研究成果までを、まとめて知ることができる本書。逃れようのない異常気象にただ怯えるのではなく、正しく恐れ、最善の行動を選ぶためにも、一読を勧めたい。








