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2026.04.07

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愛着障害とはなにか? 手ごわい不適切行動の意味と解決策を解き明かす決定版!

「愛着障害」とは何か? 子どもの成長過程、家族との関係や学校での行動などにおいて、過激な言動や攻撃性などが現れることがある。時には暴力も伴うような、制御不能な状態になる行動について、ASDやADHDといった「発達障害」の要因も近年では考えられてきた。しかし、それが先天的要因ではない「愛着障害」だったら? 本書は、臨床発達心理学および実践教育心理学を専門とする著者による、知られざる「愛着障害」についてのガイドブックである(なお、著者は2026年1月に急逝)。

まず、愛着障害の簡単な定義について、本書の冒頭から引用しよう。
愛着とは「特定の人と情緒、感情、気持ちで結ばれるこころの絆」と定義されます。これはいわば、自分にとって特別な意味を持つ人との「つながり」を十分に感じられる、ということです。普段はあまり意識されませんが、私たちはこの絆があるから感情豊かに、かつ意欲的に生きていくことができます。
ところが何らかの事情により、十分な絆が結ばれないままになることがあります。そのような愛着形成不全の状態が「愛着障害」であり、こどもが示す数々の「してはいけない行動」(不適切行動)の背景には、この愛着障害があることが多いのです。
そして、ADHDやASDといった発達障害と、愛着障害の違いについては、以下のひとことで簡潔に説明する。
愛着障害は他者との関係のなかで起こる後天的な問題であり、「生まれつき愛着障害のこども」はいません。
「ADHDは行動の障害、ASDは認知の障害、愛着障害は感情の障害」である、という印象的なフレーズも本書にはある。その問題行動が何に起因しているのか、それを判断・区別することが子どもの支援にまず必要なことだと著者は説く。また、スペクトラム(連続体)という語を含む本書のタイトルについても、著者自身による解説が最もわかりやすい。
よく知られているように、自閉症は「自閉症か否かという二元論は不適切」という共通認識が世界的にできたことで、スペクトラム(連続体)と考えられるようになりました。だから現在では「自閉スペクトラム症」という言葉が使われています。
これと同様に私は、愛着障害もスペクトラムとして捉えるべきだと考えています。「愛着障害か否か」ではなく、愛着の問題も連続体として考えるべきなのです。
愛着障害は、その行動パターンから発達障害の一種と捉えられやすい。その判断のもとに治療や対策が行われた結果、逆効果をもたらすことも多いという。「専門家にすら誤解されているのが現状」と著者は嘆きつつ、その正しい理解と解決の道のりを真摯に語っていく。といっても、堅苦しい内容ではなく、マンガや図表を交えて終始わかりやすく解説する。マンガとイラストは『発達障害 僕にはイラつく理由がある!』なども手がけた、かなしろにゃんこ。が担当。ストレスフルな難問に向き合う保護者や教育者にやさしい作りだ。

以下は、愛情障害の特徴を示した図表。これらの行動に心当たりのある周囲の大人には、ぜひ参考にしていただきたい。
そして、本書中盤からは愛着障害のさまざまな事例が、マンガとともにバリエーション豊かに紹介される。本書は全300ページ超の大部だが、このマンガ部分も多くを占めるので、決して怯(ひる)む必要はない。むしろ読み終わるころには、ページのめくりやすさ、読みやすさに驚かされるはずだ。
漫画 かなしろにゃんこ。
読みながら、自分の幼少時代の記憶と照らし合わせて「あれはそういう感情だったのか」と思い当たる場面もあるかもしれない。これらの行動と直面したとき、あるいはその根源を考えるとき、以下のような考え方を意識することも薦められる。確かに、すべての子どもの行動と思考は「連続体」であり、なんら問題のない平時の精神状態とセットで考えるべきだからだ。
なお、こどもの気持ちと言動を見るにあたって、ひとつ気をつけたいことがあります。
こどもを観察する際には、ある行動が「出ているとき」だけでなく、その行動が「出ていないとき」にも目を向けるようにしてください。「出ているとき/いないとき」の両方を見て、初めてパターンがつかめるからです。
また、これまでの努力が「リセットされる」ように思える瞬間の対処法も印象深い。何もかもが水の泡……と悲観的に考えてしまいそうになる瞬間にこそ、実は光明が待ち受けているかもしれない。確かに、子どもはそんなドラマチックな展開をナチュラルに用意する達人であることを思い出させてくれる。
しかし支援が完了するまでの過程のなかで、大人との間に関係性がだいぶできてきた頃、なぜかもう一度、試すような行動が起こることがあります。支援者のみならず、実の親に対しても同じような現象が起こることがあります。
支援が後退したかに見えるこの現象について、私は養護施設や学校の先生、里親さんから相談にあずかることが多いのですが、実はそこを乗り越えるとこどもが劇的に成長することがわかっています。
この行為は、自分にこどもが最終試験を課してきたと思うべきものです。これを乗り越えるととんとん拍子に成果が積み上がっていきます。ですので落胆せず、むしろ成功の証と捉え直して支援を続けていただくことが大切です。
本書後半には、「キーパーソン」の援用による問題解決の方法も紹介される。愛着障害の子どもたちを導くキーパーソンには、1日のうちの多くの時間をともに過ごす相手(保護者、もしくは学校教員など)が選ばれることが多いが、なかなか細やかな気遣いを求められる大仕事といえる。ただし、本書が示唆するような方法論がハッキリしていれば、「割りきってコトに当たれる」頼りがいのある存在になるだろう。ゆえに、キーパーソンに対するケアも必要になってくるだろうとも考えさせる。
漫画 かなしろにゃんこ。
ただでさえ子どもの心は気まぐれで掴みどころがなく、苦労することも多いだろう。一方で、その純粋さ、デリケートさに胸が痛くなるほど感動することもある。本書は育児の難しさを伝える一冊でもあるが、その深遠かつ守るべきメンタリティについて学ばせてくれる本でもある。

メッセージ性の高い文章のなかには、図らずも著者の「遺言」のように読めるところもある。そのなかから、ある厳しくも感動的な一節を抜き出してみよう。これも、その真意をきちんと汲み取ろうと思うなら、実際に本書を手に取ってみてほしい。
大事なのは、こちらがいくら愛情を注いでいるつもりでも、それをこどもが愛情と感じなければ愛情ではないということです。愛着を愛情と勘違いするなとおっしゃる愛着の専門家がよくおられます。愛着と、注ぎ込む愛情とは違う、というご意見ですが、愛情を一方的に注ぐものだ​と捉えるのは間違いで、愛情はかかわりからこどもが感じるもの​です。そして愛着の絆をとおしてこどもが愛情を感じ、関係性を意識して感情発達していくことを含めて「愛着形成」と捉えなければならないのです。

レビュアー

岡本敦史

ライター、ときどき編集。1980年東京都生まれ。雑誌や書籍のほか、映画のパンフレット、映像ソフトのブックレットなどにも多数参加。電車とバスが好き。

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