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2024.11.08

レビュー

うちの子、小学校6年間やっていける? 発達障害のある小学生を子育て中の著者によるアドバイス!

子どもの「できた!」が増える

子どもが小学生になるときは、成長が嬉しい反面、不安や心配を感じることもあるでしょう。特に発達障害やグレーゾーンの「他人に合わせる」「状況を読む」ことが苦手な子どものいる家庭では、喜びよりも不安のほうが大きいかもしれません。

『感覚統合✕モンテッソーリの視点で伸びる! 発達が気になる小学生の学校生活&おうち学習ガイド』は、そんなお子さんと家族に向けた手引書です。どのページにも「そういうことか!」「これならできそう!」という驚きと納得があります。

著者のりっきーさんは、モンテッソーリ教師で保育士、自閉スペクトラムとADHD診断のある小6の長男と小2の次男の子育て中。育児書通りにいかない子育てに悩み、なかなか支援にたどり着かない中で、自ら学ぶことで幼児教育と発達支援の道に足を踏み入れました。
本書は、モンテッソーリ教育の環境設定(物の配置、道具の選び方などの「物的環境」や大人の関わり方などの「人的環境」)や、発達支援の環境調整(特性を踏まえ、可視化や仕組み化をすること)の考え方をベースに、発達の土台となる感覚統合の視点を取り入れて困りごとに寄り添う一冊です。
「すぐできる短期的支援」「原因を知り長期的に改善していくヒント」の2本立てで、子どもの「できた!」を増やします。「with class」のコラム記事やりっきー家の取り組みを載せたInstagramの記事に飛べるQRコード、特性のある子の学校生活をサポートしてくれるグッズの紹介も。

ひとことで「小学生時代」と言ってもその期間は6年間と長く、子どもの心身が著しく成長する時期でもあります。
この本は、未就学児の発達や、就学に関する相談先から、入学後の「忘れものをしてしまう」「お友達との距離感が難しい」などの問題、苦手科目の学習補助や高学年で直面するSNS問題など、未就学〜小学生の子どもがぶつかる悩みごとを幅広く網羅しています。
発達障害、グレーゾーンの子どものいる家庭が直面するお悩み、困りごとを乗り越えるための多角的な支援となる一冊です。

困った子は「困っている子」

発達が気になる子どもたちには、こんな言動が見られることがあります。
集団行動が求められる場面では「みんなと同じことができない子」「言うことを聞かない困った子」に映ることも。
しかし、本書で繰り返し語られるのは、彼らは「困った子」ではなく「困っている子」だということ。りっきーさんは言います。
表面上に見えている姿だけではなく、背景にある「なぜ?」を知って関わる必要があります。
日常生活は、私たちが意識せずに使いこなしている感覚で成り立っています。受け入れられる感覚情報の量には個人差があり、それが平均より大きくても小さくても日常生活に支障が出ます。「大人しく座っていられない」「ものを丁寧に扱うことが難しい」……といった行動に現れるのです。

本書では学校生活や日常生活において「どんなときに、どんなトラブルが予見されるか」がすぐに分かるようになっています。

たとえば「給食当番がうまくできない」子は、何が苦手で、どう感じているかがわかるのがこのページです。
十分な時間がない中で、複雑な作りに見えるエプロンを素早く着て、給食をこぼさず、不公平にならないように盛り付ける。小さな、それも特性のある子どもにはハードルの高い作業です。

それを踏まえた「短期的サポート」がこちらです。
困りごとへの「今すぐできて効果のある対策」がわかるのがうれしい。「できない理由」は子どもの能力の問題やわがままではないので、必要なのは「頑張り」「無理」ではなく、特性にあった「仕組み化」だとわかります。

子どもの「将来の自立」を踏まえ、長い目で見た支援も。こちらは自宅での日々の生活の中で、身体感覚を養う取り組みです。
すぐに「できる」ことで自信を養い、「18歳で一人暮らしできるようになる」といった長期の目標に向け、できることを増やしていく……。子ども自身の「困りごと」の解消だけでなく「これは0歳くらいまでにできるようになれば大丈夫」と見通しがつくことは、家族の安心にもつながると感じます。

「できない」の背景にあるものを知る

私が本書を読んで驚いたことのひとつが「文章を読むのが苦手な子は、平衡感覚が弱い」ということ。一見関係なさそうな「読む」と「平衡感覚」にどんな関係があるかは本書を読んでいただくとして、「できない」にはこんなにも明確な理由があるのに、それを知らないと「乱暴な子」「勉強が苦手な子」に見えてしまうことにショックを受けました。
本人以外にはわからない「子どもに起きている問題」を、りっきーさんの学びと観察眼が的確に切り分け、家庭でできる解決のための取り組みに落とし込んだのが本書です。
子どもの「できない」の影にある様々な理由を知ることも、親の「どうして?」「ちゃんとして!」というイライラを減らし、余裕を生む「支援」のひとつだと感じました。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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