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2026.01.28

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【冷戦後の世界史】プーチン、習近平、トランプたちを突き動かすレコンキスタへの妄執

穏やかな三が日の空気を破って、そのニュースは飛び込んできた。現地時間の2026年1月3日未明、ベネズエラの首都・カラカスでアメリカ軍が軍事攻撃を行ったという。同国のマドゥロ大統領夫妻を拘束し、ニューヨークへ連行したとの報せだった。「内政干渉」「他国への武力行使」「国際法違反」──非難の言葉が次々と頭に浮かぶものの、発表されたトランプ大統領の弁に、それらが枷となっていないことも見て取れる。まるで、本書の副題である「なぜ『力こそ正義』はよみがえったのか」が、現実の出来事として具現化したようだった。

本書は2022年から3年以上にわたり、共同通信社が配信し、加盟新聞社25紙が掲載した大型国際インタビュー「レコンキスタの時代」(隔週連載、計80回)を全面改訂し、書籍用に書き下ろしたものである。1963年生まれの著者は共同通信社に入社後、特派員として世界各地を飛び回り、取材を重ねた。現在は国際ジャーナリストとして活動するかたわら、「レコンキスタの時代」の後継企画である「レコンキスタ2.0~トランプのアメリカ」と題するインタビューも手掛けており、本書にはその一部も盛り込まれているそうだ。

そんな著者は、本書のねらいについてこう語る。
古代の賢人は「万物は共鳴する」と喝破した。現代社会に生きる私たちにも同じことが言える。異なる国に暮らしていても、相互に作用し合い、メトロノームのように同調し、一つの時代潮流(トレンドライン)を形成する──。
そんな視座から、現代と世界を理解しようと試みた。プーチンと習近平、トランプをバラバラに見るのではなく、共通のトレンドラインにおけるロシア的、中国的、そしてアメリカ的な表現と捉えるよう心掛けた。
3者を突き動かしているのは「失地回復(レコンキスタ)」への強烈な意志だ。だからプーチンはウクライナを再征服しようとし、習は「中華民族の偉大な復興」を唱え、トランプは「MAGA(米国を再び偉大に)」を連呼する。
「レコンキスタ」といえば、一般的には、中世ヨーロッパで起きたキリスト教の失地回復運動を指す。20代半ばを事件記者として過ごした著者は、この言葉を、ある民族派団体の機関誌タイトルとして知ったという。それから30数年を経て、ロシアによるウクライナ侵攻を目にした著者の胸に、その言葉があらためて浮かんできた。
本書ではこうした問題意識から、「失地回復(レコンキスタ)」という切り口を通じてプーチンや習、トランプの思想と行動を読み解き、彼らのようなストロングマン(強権指導者・独裁者)を輩出するに至った時代と世界を考察した。
(中略)
同時に、ストロングマンを輩出するに至った冷戦後の世界、とりわけグローバル化が生んだ経済格差や文化摩擦、それらがもたらした左右のポピュリズムや、権威主義が勢いを増す時代潮流(トレンドライン)に目を凝らした。
全9章から成る本書は、アメリカに始まりロシア、中国へと視線を移しつつ、各国の政治史を章ごとにさらっていく。その過程では、その時々の要人や研究者の生の言葉を引き出すことで、権力者たちの思考と行動原理を浮かび上がらせていく。第5章以降では、BRICSの拡大とグローバルサウスからの視点、SNSや各国の選挙に対する情報工作といったテーマで、民主主義が対峙する権威主義の復古と、これからの国際秩序の行方が模索される。

各人のインタビューはもとより、著者の視点と思考を通して整理された情報は、現代を生きる私たちに世界の流れと強者の論理を、驚くほど読みやすく伝えてくれる。一市民であっても、知ることが力になる。そう信じて、本書を拠り所に今と向き合いたい。

レビュアー

田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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