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2026.01.26

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徘徊、妄想、幻覚……認知症の周辺症状が自然と消える介護技術「ユマニチュード」

タイトルを前に、「『ユマニチュード』ってなんだろう?」」と首をひねった。介護に関する言葉だろうとはわかるものの、内容までは想像できない。「ユマニチュード」とは、一体どういうものなのか。
「ユマニチュード」は1979年フランス発祥のケア技法です。
ユマニチュードが従来の介護技術と異なるのは、「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを「相手が理解できる形で届ける」ことを徹底させる点です。この技術によって相手との良い関係を築くことができ、穏やかにケアを受け取ってもらえる可能性が増え、同時に介護をする方の負担が減ることもわかってきました。
そう語るのは、国立病院機構東京医療センターで総合内科医長と医療経営情報・高齢者ケア研究室の室長を務める本田美和子医師。内科医として勤務するかたわら、日本におけるユマニチュードの導入と実践、教育、研究に2011年から携わり、活動を続けている。

監修は、ユマニチュードの生みの親であり、名付け親でもあるイヴ・ジネスト氏。「人間らしさを取り戻す」という意味が込められたその技法には、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの技術があるそうだ。
ユマニチュードの技術とは、私たちが大好きな人に対しては「本能的に」行っているコミュニケーションです。この技術を私たちが「困ったな……」と感じる方々に対して「意識的に」行うことで相手の不安な気持ちを解消し、困った状況を解決することができます。その基本技術を「ユマニチュードの4つの柱」と呼んでいます。
このように本書では、この4つの柱を基として、人間の記憶の仕組みや認知症についても解説しながら、全5つのチャプターを通じてユマニチュードの技術の活かし方を説いていく。

ところで、認知症の症状は大きく2つに分類される。
脳細胞の変性によって起こる症状が認知症の「中核症状」ですが、その症状に伴って現れる心理的・行動的な症状を認知症の「周辺症状(行動心理症状)」と呼びます。周辺症状の特徴は、ご本人の人生の歴史、性格、健康状態、環境の変化や、周囲から受けるストレスなどが引き金となって起こることにあります。
認知症をもつご家族の介護をしている方がお困りになることがとても多いのが、この周辺症状です。
中核症状については、現時点では有効な治療法が確立されていない。そのため、介護の場面でユマニチュードが力を発揮するのは、主に周辺症状への対応であり、具体的には幻覚や幻聴、妄想、徘徊、暴言や暴力、介護拒否などが挙げられる。
認知症の周辺症状の対策の原則は、その引き金となる、ご本人が感じているストレスを減らすことです。「私が一緒にいるから大丈夫ですよ」「安心してください」というメッセージを「相手が理解できるように伝え続けることでご本人の不安な気持ちを鎮(しず)めることができます。別の言い方をすると、私たちが相手に対して情報を届け、「安心できる環境になる」ことで認知症の周辺症状を抑えることができます。
つまり介護をする人が相手にとっての「薬となる」のです。
こうした点を踏まえ、チャプター3以降では、介護シーン別の対応と実践が紹介されている。特にチャプター5では、「不安の病」である認知症をもつ方とより良い関係を築くためのケアの手順と5つのステップが、ケースごとに取り上げられている。いずれもよく聞く介護の悩みばかりだ。すべてを一度に実践するのは難しいとしても、これまでとは異なる視点で相手の世界を知り、向き合ってみることには、きっと価値があるだろう。

白、黒、黄色の三色で印刷された本書は、めくるだけで要点や重要度が自然と伝わるつくりになっている。専門的な内容でありながら、ピクトグラムやイラストも多く、読みやすさへの配慮も随所に感じられる。これから介護に向き合う方をはじめ、すでに当事者として介護の現場に立たれている方も、一度手に取ってみてほしい。

レビュアー

田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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