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2025.12.02

レビュー

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【完全保存版】劇団 ☆新感線45年「あの人のロングインタビュー」ほか、舞台裏までの全記録! 

「ファンの復習ノート」かつ「初心者への招待状」

2009年、私は「蛮幽鬼」で劇団☆新感線の世界に足を踏み入れた。美しい殺陣、演者たちの火花のような輝きに撃ち抜かれた私は、以降赤坂ACTシアターやIHIステージアラウンドに通い詰め、隙あらば「ゲキ×シネ」にも足を運んだ。そんな私にとって『劇団☆新感線45年 サムライたちの野望』は「最高の復習ノート」である一方、まだ劇団☆新感線を体験していない人にとっては胸を高鳴らせる「招待状」にもなると感じている。

本書の素晴らしさは、“45周年記念誌”というだけでなく、「野望」というタイトルが示すとおり、未来への創作意欲に満ちた現在進行形の記録であることだ。
写真/山本倫子
いのうえひでのり、古田新太、中島かずきという三本柱のインタビューから、天海祐希、生田斗真ら豪華キャストの証言、そして「ずずずいーっと! 写真館」まで、多角的な構成が劇団☆新感線の魅力を余すところなく伝えている。

記憶と演者の言葉が重なる至福

「演者6人が語る 新感線はこう進化した」で豪華メンバーが語る新感線体験は、劇団の魅力を多角的に浮き彫りにする。
そんな中、向井理さんの

特に新感線は役者がつらければつらいほど面白いんですよ。
に「ですよね」と深く頷いたり、池田成志さんの
『髑髏城の七人』Season鳥(17)で、阿部(サダヲ)が本気でハンマー振り回すんですよ、俺の心臓めがけて。怖いすわ。阿部、手ぇ抜かないから。
に「やっぱりあの勢いは“マジ”だったんだ」と背筋がひやりとしたり。演者たちの「命がけ」の熱量が垣間見えるのもうれしい。

パンフレットでも読めない「すべらない話」が聞けるのは「総動員数60万人!  出演者38人に聞いたステアラの記憶」だ。
客席が360度回転するIHIステージアラウンドでの体験は、通常の劇場では味わえない感動がある。ここで観た「髑髏城の七人」シリーズや「メタルマクベス」の記憶が、演者たちの証言と重なり合う瞬間は至福の時間だった。滑らかに回転する客席が叶えるスムーズな場面転換、至近距離の殺陣、何より演者たちの熱量が直接肌に伝わってくる特別な空間の魔法を、本書は言葉と写真で追体験させてくれる。

涙が出るほど感激したのが『修羅天魔〜髑髏城の七人』Season極の大詰め、極楽太夫の走馬灯シーンの舞台裏が公開されていることだ。観た人全員がきっと忘れられないであろう、あの特別なシーンに感じていた「不思議」のわけをいま知ることができる喜びと、「もうステアラはないんだ……」という感傷にしばし浸った。

あのときの天海祐希の美しさは本当に神々しく、そこにないはずの花が背後に咲いた——と感じた夜を思い出す。「ゲキ×シネ」で同じ場面を観たとき、その花びらの気配をさらにくっきりと感じた。「ゲキ×シネ」ならではのカメラワークが、舞台では捉えきれない表情の機微や演技の細部を鮮やかに映し出すのだ。
そんな「ゲキ×シネ」だからこそのベストシーンも、本書には掲載されている。
繊細な演出が生み出す、何度でも観たくなる名シーンを紙上で堪能できる。

「目が足りない」をカバーする「ゲキシネ」の魅力

そう、「ゲキ×シネ」こそが、この本を初心者への最高の招待状にしている理由でもある。舞台のライブ感も素晴らしいが、劇団☆新感線の舞台はあまりに見どころがありすぎて「目が足りない」状態になることも多い。ゲキシネなら、カメラワークが「見どころ」を的確に教えてくれる。舞台で観た作品をゲキシネで観返すと、また別の感動に出会うことができる。

初めての1本には、「狐晴明九尾狩」(きつねせいめいきゅうびがり)をお勧めしたい。ステアラのようにスムーズな場面転換はできないはずなのにシーンの切り替えが実に自然で映画のよう。そしてラストのワンカットが舞台では観られない、なんとも言えない素晴らしさなのだ。

本書は単なる長寿劇団ではなく、常に新しい挑戦を続けてきた劇団☆新感線の「野望」の軌跡。
長年のファンにとっては懐かしい記憶を呼び覚ます宝物に、初心者にとっては新感線の世界観を視覚的に体感できる入口になるだろう。

本を閉じたら、今度はあなたの足で劇場へ——まずは映画館で観られる「ゲキ×シネ」に足を運んでみてほしい。「野望」が生み出す奇跡の世界があなたを待っている。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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