そんな答えの出ない話を著者の月村了衛さんとしているとき、「普通が壊れた時代に、普通を望む若者の物語」という本書の構想は生まれました。21世紀のいわゆる平均的な家庭に生まれた川辺優人(かわべゆうと)という語り手はどんな人生を辿ってきたのか。彼が書いた三通の手紙には、中学受験、トー横、悪徳コンサルタントを経た一人の人生が詳細に書かれています。そこからあぶり出されるのは現代にはびこる精神的堕落ぶりとそのなれのはて。
昭和、平成、令和を書き続けた月村さんだからこそ到達できた、「普通」を通じて「普遍」に至る、新たな代表作をお楽しみください。
──文芸第二単行本編集チーム 大曽根幸太